初めてのお供(改)
アスワドが留守の間、カタリナは離れの仕事と本邸の仕事を掛け持ちし、コマネズミの様によく働いていた。本邸では離れだけでは覚えられない侍女の作法を学び、離れでは執事のルッツィからアスワドの嗜好や生活を教え込まれ、次の長期休暇に主人が帰ってきた時には仕込まれた作法でアスワドを驚かせた。
そんなある日
「カタリナ、僕のコートを知らない?」
「はい。今ご用意いたしますね。」
クローゼットからコートを取り出しアスワドに渡す。それを受け取った若い主人はカタリナに思わぬ提案をしてきた。
「カタリナ、今日時間ある?」
「とりあえず用事は済ませていますけど。」
「じゃあ、僕の用事に付き合ってくれないかな。」
「ヒイラギ様のお供ですか?」
「うん。図書館に行くんだけどさ、君休みの日もぼんやり過ごすだけだろう?たまには息抜きに出かけないかい。」
うーん。カタリナは唸った、お供ならこのお仕着せでいいだろうが場所が場所だけに外出着が無難かもしれない、さてはて困ったと悩むカタリナにアスワドが追い打ちをかける。
「どうかな?よかったら外出着に着替えておいでよ。」
「ヒイラギ様、私このお仕着せ以外真っ当な服がございません。ですからお供はできませんわ。」
アスワドは少し息を飲んで驚くと、すぐに笑顔になった。
「君、僕の事誰だと思ってるのさ魔法使いだよ。」
そういうと、お仕着せに杖を一振りし簡素だが上品なワンピースに変えてくれた。それから二人は公爵夫人に外出の許可を得て門を出る。門前で待っていた簡素な馬車に乗り込み図書館まで走る。
「そうかぁ、服がないんじゃ休暇も楽しめないはずたよ。帰りに二、三着見て帰ろう。僕からのプレゼントだから気にしないで、普段誰かに贈り物をする事がないから楽しみだな。それからさ、僕のことはアスワドって呼んでよ。」
車窓を見ながらニコニコと笑うアスワドには申し訳ないが流石にその呼び方は・・・と、思い
「あの、流石にアスワド様とは軽々しくお呼び出来ません。」
「どうして?歳も近いんだからさ兄妹みたいに考えようよ、幼馴染でもいいか。僕は君が可愛いんだよね、ほら僕って兄妹も身内いないからさ。そりゃ確かにあの離れの主人ではあるけれど、ね、ダメかな?」
「・・・わかりました・・・でも私は侍女です。特別扱いは困ります・・・」
顔を赤くしてカタリナは訴えた。
「大丈夫、離れの中だけさ。」
そう安心させてアスワドはまた軽く笑った。