魔法騎士団
やがて春になり、アスワドは魔法騎士団へと入団して行った。魔法騎士団に入ると魔法魔術学校の学籍は抜ける、必要な事は騎士団で学ぶのだ。魔法騎士団の規律は厳しい事で有名だし、その鍛錬も一般の騎士団同様激しく体力を使う。その中にヒョロっとしたアスワドが入って来た時は騎士団全員が持つかどうか賭けをした。大半は逃げ出すに賭けたが生憎アスワドは辛い鍛錬も耐えていた、そうなると団員達の見る目も変わってくる、ある日を境にアスワドは急に親切になった団員らに驚かされる。
「お前さぁ、なんでまた騎士団なんか選んだんだ?魔法省の奴等が言ってたぜ逃げられたって。」
先輩の騎士が問うてくる。実際のところアスワドにも良く解らない、カタリナにはああ言ったがあれは本心ではあったが自分はまさに逃げて来たのだ。魔法省などにいれば国王に謁見する機会があるやも知れず、誰にも言えない自分の過去から逃げたかった。魔法騎士団は鍛錬に魔術の技術磨きにと忙しい、厄介な事を考える暇もないのだ。しかし妹分であるカタリナを蔑ろにするわけにはいかない、何より彼女は自分にとっても
特別な存在なのだ。だからアスワドは例のポストを通じてカタリナと文を交わす、騎士団に入るのを反対したカタリナに安心安全だと分かってもらう為に。
「そういやぁさぁ、お前なんか特別なポスト持ってるよな。あれか?彼女と文通か?」
別の先輩が聞いてくる。
「あれは離れに残して来た妹分の侍女の為のモノですよ。彼女とか今は考えられません。」
「そうかぁ?侍女にしちゃエライ特別待遇だな。」
「侍女、何歳?」
「えっと、13歳です。僕、天涯孤独で兄妹とか欲しかったんで。」
「13、犯罪だわ。」
「いやいや、こいつがビシッと騎士服着る頃には丁度いいんじゃないか?」
周りの騎士達は口々に勝手な事を言い始めた。それでもアスワドにはココが心地よく感じる。今日は模擬試合だ、剣に似せた木刀で闘い合う。何度目かのソレには今まで怪我をしたこともあったし、模擬試合といっても下手をすれば命に関わる。アスワドはカタリナにはこの模擬試合の事は教えていなかった、余計な心配はかけたくない。
「ところでアスワドは一回戦、誰と当たるんだ?」
今日の相手は魔力の無い騎士団と一緒だ。
「・・・アーネスト・ラドリックです。」
「あぁ、またか・・・」
アーネスト・ラドリック。歳はアスワドと同じ15歳、
前回、前々回とアスワドと対戦して負けて以来仇のように思われているらしい。
「お前気を付けろよ、あぁいう奴が怖いんだ。こないだ見たけど、お前の事、遠くから睨んでたぞ。怖い怖い。」
「結果はどうあれ、正々堂々と対戦するしか無いですね。」
アーネストの粘着質な気質は困るが、本当に実力で対戦するしか無いのであった。