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この世の果て  作者: にしのかなで
11/16

秘密

いよいよこの日がやってきた。今日は貴族の子息令嬢及び魔法魔術師の成年の儀である。昼から出勤のアスワドを送り出し、カタリナとルッツィは午後のお茶を飲む。あの日以来、アスワドは普段通りに振舞っていた。


「いよいよ今日ですね。」


「そうだね。今日でやっと終わりだ。」


「そうですね、いつもの平穏な日々が帰ってきます。」


カタリナは拳を腰の脇でギュッと握りしめルッツィに答えた。今日を無事終わらせればアスワドの悩みも終わる、そう信じて1日が無事に終わりますようにと空に願う。もうアスワドに迷いのない日が戻ります様に。


一方会場である王宮の2階ではアスワドが精神を集中させていた。幾ら誰でも出来る仕事とはいえ、選ばれたのは自分だ。誠心誠意それに応えなければいけない。 やがて辺りが闇に包まれる頃、騒めきが広がって来る。今日の主役達が集まって来たのだろう。華やかな一団と漆黒の一団が会場に広がって行く。


二階から彼等を見渡せば皆、紅潮した頰で何やら語り合っている。自分のパートナーとなる筈だったアリソン・パーカーもその脇にしっかりと新しいパートナーを連れてこちらも楽しげに話していた。ふと視線を感じると、級友らが心配そうにこちらを見ていた。軽くそちらに手を振ると、与えられた部屋に戻る。深く深呼吸をし、杖を握り開始の合図を待つ、やがて音楽隊の演奏で成年の儀が開幕を告げた。アスワドが杖を指揮棒の様に振ると会場の照明がキラキラと色を変える。照明には蝋燭は勿論、大から小の魔法石が使われアスワドの仕事はそれらを互いに反射させたりしながら華やかに派手に豪華に色を変える事だ。アスワドは誰でも出来る仕事だと言ったが繊細さを大事にする魔法は複数の魔法師の力が必要だ、それをたった一人でこなすアスワドの高い魔力を魔法省が選んだのはさもあらん事だった。


やがて国王からの祝辞が始まると今度は落ち着いたムードへと色を変えるが、その間アスワドの顔色は非常に厳しい。そして祝宴が始まりうら若き成年したばかりの男女がダンスを踊る。今宵咲いた華たちはそのまま来年の社交界の華となるのだろう。若い魔法師達もこぞってダンスを楽しんでいた。なぜ自分は彼処に居ないのだろう、なぜ自分は魔力が高いと言われてもこんな所に居るのだろう?なぜ会場で国王、王妃両陛下に拝謁出来ないのだろう。それは国家機密に関わる事、アスワドは彼等両陛下に合わない様にされているのだ。


彼は系図に残らない王家の一員だった・・・。




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