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この世の果て  作者: にしのかなで
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屋敷預かりの魔法使い(改)

「ちいさな僕のお姫様」シリーズの前身作品です。あまりに暗くなりそうので悩みましたが書き上げる事にしました。

魔法大国ハヴェルンの首都アデーレには3つの公爵家がある。アンハルト、クリステンセン、シュヴァリエ。各公爵家は全て現王家のデア家と縁がある。そして、各公爵家にはそれぞれ家人の住む本邸とは別に世間から隠される様にひっそりと魔法魔術師を屋敷預かりにするための強固な結界が張られた離れが存在する。


魔力持ちの子どもが生まれればその将来は国が保証してくれるが、彼等には一つ重要な問題があった。大人になって魔力持ちだろうが、普通の人間との間であろうが子どもが産まれる確率が低いのだ。そのため、殆どの魔法魔術師達は最初から子どもを諦めている。そして、魔力持ちは貧富の差なく産まれ出るため庶民、貴族、そして当然王族の中にも稀に産まれてくる、


王族及びそれに連なる王位継承権をもつ三大公爵家の子どもに魔力持ちが産まれた場合、その子の王位継承権は剥奪される。そして王族の子どもは家系図からも外され強力な結界を張る離れのある三大公爵家の何れかに屋敷預かりとして魔法魔術学校の過程を卒業する17歳まで世話になることが決まっている。これは魔法により権力を有利に扱い謀反を起こすことのないようにと、取り決められた秘かな条約だった。


幸い王家には滅多に魔力持ちが誕生せず、現在一番強力な離れを持つシュヴァリエ公爵家で預かっているのはウェーブのかかった黒髪と黒い瞳を持つアスワド・ヒイラギ12歳、唯一人であった。彼は魔法魔術学校在学中に両親が他界し、その能力の高さからいずれは離れの結界を守るためにと引き取られてきた。長期の休み以外は学校の寄宿舎で過ごし休みになればシュヴァリエ公爵家の離れに帰る。そんな生活を続けていたある日、公爵夫人に呼び出される。


離れには専属執事がいるのだがそれとは別に新しく離れ専属の侍女を紹介するからと本邸に呼ばれたアスワドはそこで自分より2歳下のカタリナ・ハンセンと出会う。


「ごめんなさいね、アスワド。次の休みでもいいかと思ったけれどちょうど連休だしこの子を紹介するいい機会かと思って。これまで3ヶ月、本邸で見習いをやらせてるから問題はないと思うのだけど。」


と、言うのはふくよかな人懐こい笑顔の公爵夫人。この国の特に三大公爵家の中でもとりわけ代々慈善事業に熱心な家風からか、夫人は時折こうして貧しい家の子どもや親のない子どもを使用人として雇い入れている。今回の侍女もそうした境遇だろうと想像してきた。しかし、本邸の客間で対面した痩せっぽちの少女は何処か怯えた風に見える。


「さあ、カタリナこれからあなたがお世話をする魔法魔術師さんよ。ご挨拶して。」


長い赤毛というよりもオレンジ色ウェーブのかかった髪とと紅茶色の瞳をした10歳の少女は顔を上げると真っ直ぐにアスワドを見て挨拶をした。


「初めまして、アスワド・ヒイラギ様。カタリナ・ハンセン10歳です。よろしくお願いいたします。」


痩せっぽちだが整った顔立ちをしている、今迄の生活が過酷だったのかもしれないがこの屋敷に来たからには食べるには困らないすぐにもう少し肉がつくだろうと考えながら自分も名乗る。それにしても、10歳とはまだ幼いんじゃないかな?


「初めましてカタリナ。僕は・・・あ、もう名前は知っていますね。屋敷預かりの魔法魔術学校の学生です。長い休み以外は殆ど寄宿舎にいるので留守の間はよろしくお願いします。」


「さあ、紹介が終わったらか離れに案内してあげてもらえるかしら?執事のルッツィには紹介済みだから。」


「はい。じゃあ行こうか、カタリナ。」


「あ!はい。では奥様失礼いたします。」


「わからないことはルッツィに聞けばいいから。」


アスワドはカタリナの荷物を持つと夫人に礼をし部屋を出た。その後を慌ててカタリナがついて行く。廊下に出てからカタリナはアスワドに言った。


「ヒイラギ様!私の荷物は自分が持ちますっ。あ、ちょ、ヒイラギ様!」


「いいよ、女の子なんだから僕が持つ。あ、離れには入ったことある?」


「いいえ、今日が始めてでございます。」


「じゃあ、もうすぐなんだけどこの本邸と離れを繋ぐ扉があるんだけどそこにはいつも扉の番人がいるんだ。で、番人の許可無しに出入りできないから気をつけて。」


「番人!離れとはそんなに危ない所なのですか?」


くすりと笑ってアスワドが答える。


「危なくも恐ろしくもないよ。ただ、結界のバランスを保つために入る人間を限らなきゃいけないんだ。」


扉の番人が見えてきた、アスワドが何か記入している。それから扉が開かれ二人は離れの敷地内に入った。


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