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      二匹 ‐カタホウ‐ 弐

「それに一瞬ではあるが、友恵の父親に憑いていた妖怪を見る事も出来たの」

「っ、やっぱりお父さん、妖怪に取り憑かれていたの……?」

「うむ。少しばかり(たち)の悪い妖怪が、の」


 霊感が無い友恵には一切見えていなかったが、同じ妖怪である猫又はしっかりと見ていた。

 友恵よりも小さな体に禿げた頭の、年老いた妖怪の存在を。


「あ、あの……でもね」

「ぬ?」

「供助お兄ちゃんは最初、お父さんじゃなくてお母さんに妖怪が憑いてるって言ってたの」

「……ふむ。その時、供助は他に何か言っておらぬかったかの?」

「ベッドから妖気を感じたって。そのベッドにあった枕と枕カバーの事を聞いてきたよ」

「なるほどの、ベッドに枕か」

「あと、少し前にお母さんが悪い夢を見ていたって教えたら、なにかわかったような顔をしてた」

「ほぅ、悪い夢とな」


 ベッド、枕、悪い夢。このキーワードが揃えば、ほぼ答えと言っていいだろう。

 友恵の話を聞き、供助も妖怪の正体に気付いていたと猫又は知る。

 しかし、供助は母親に妖怪が憑いていると考えていたが、実際は父親に憑かれていた。

 では、供助の推測は外れたのか。それは――――否。

 供助の推測は当たっていたのだ。ただ、さらに先にあった正解を導き出すには情報が足りなかった。

 結果、予想外の展開に陥り、あのように不意打ちを受けてしまった。


「やはり、妖怪は複数おったか」


 猫又は驚くよりも、合点がいったと納得する。

 友恵の家で供助と分かれてから、一人で妖怪の臭いを追っていた。

 そして、その途中で気付く。友恵の家からしていた妖怪の臭い。その中に微かに混じった、もう一つの臭いに。

 偶然と言うには怪しく不可解で、意図的なものを感じた。だから、猫又は予想した。今回の件は単独の妖怪ではないと。

 街中の途中で二つの臭いが二手に分かれ、どちらか一方の選択を迫られた猫又は。考慮した後、薄臭の方を追う事を選んだ。

 結果、辿り着いたのが……いや、戻ってきた、が正しいか。着いた先は友恵の家。

 すると、家の中から追っていた希薄の臭いが強まり、臭いと同様の妖気を感じたと同時。

 友恵の叫び声が聞こえ、家に入ってみると供助が倒れ殴られていたのだ。


「しかし、どうも腑に落ちんの」

「ふにおちん?」

「納得いかない、という意味だの」


 猫又は二本の尻尾を揺らし、思考する。

 友恵の父親に憑いていた妖怪。あれはどうやって残り香を消す事が出来たのか。臭いだけじゃない。妖気の残滓(ざんし)もかなり消されていた。

 妖気や臭い、気配を消す事は可能ではあるが、ここまで完璧に近く消せるのは上位妖怪でなければ出来ない。

 だが、先程見た限りでは供助を襲った妖怪は、上位妖怪には到底見えなかった。しかも、友恵の話では妖怪の接近に供助は気付いていなかったという。性格に問題あるが、実力は確かなものだ。そこだけは猫又も認めている。

 その供助が易々と後ろを取られ、さらには不意打ちまでさせるとなると……これは何か種がある。

 こちらが一本取られてしまう程の、何かが。


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