二手 ‐フタテ‐ 参
――約十分後。公園から出て歩き、友恵の家に着く。
住宅街で周りに家が沢山ある中、唯一明かりが点いていない家。
供助と猫又には今も、友恵の家から漏れ流れる妖気が感じ取れていた。
「変わらず、か」
家から漂う妖気を眺め、供助は呟く。
昨日の今日で変化があるとは思ってはいなかったが、住宅街の中で際立って見える。
尤も、そう見えるのは霊視が出来る者だけだが。
「で、お前ぇは両親を探しに行くんじゃねぇのかよ」
友恵の家を見上げるのを止め、供助は隣の相棒へ話し掛ける。
「ふん、今から行くんだの」
猫又は和服の袖に手を入れて組み、鼻を鳴らして端的に返す。
もう必要以上の会話さえ厭わしかった。
「ネコのお姉ちゃん。えっと、お父さんとお母さんの特徴はね……」
「言わなくてよい。匂いで解るからの」
「におい?」
「うむ。友恵の両親を見付けてすぐに戻ってくるからの」
猫又は優しく友恵の頭を撫で、微笑む。
「友恵、鍵ィ開けてくれ」
「うん、今行くよ」
供助は先に友恵の家の玄関前まで移動しており、呼ばれた友恵は返事をして走っていく。
ポケットから兎のぬいぐるみらしきキーホルダーを付けた鍵を取り出し、玄関の扉を開ける。
供助はさっさと中へ入っていくが、友恵は心配そうに振り返ると、猫又は大丈夫だと笑顔を見せる。
それで安心したのか友恵の表情は緩まり、家の中へと入っていった。
「うむ、では私も動くかの」
猫又は組んでいた腕を解き、意気込む。
右、左、正面。一応念の為、上。周りに誰も人が居ないか確認する。
人っ子一人どころか、影すら無い。
「ほっ」
そして、シャンプして宙で一回転。
ぼふん、と白煙を吹き出して、人型から猫の姿へと戻った。
勿論、街中を歩くのだから猫又の特徴である二本の尻尾の内、一本は妖力を使って隠してある。
「こっちの方が動きやすいからの」
人型は人型で便利ではあるが、情報収集をする時は猫の方が向いている。
猫の姿では炎を使う篝火などの技は使えないが、小回りが利き、高い所へ登りやすく、何より目立ちにくい。
人型は姿を維持するのに僅かだが妖力を消費して、猫の姿よりも俊敏性が劣る。だがその分、火力が高い。
ほぼ戦闘向きと言っていいだろう。あと漫画が読みやすい。