二手 ‐フタテ‐ 弐
「さっきも言っただろ。行くなら一人で行けよ、猫又」
「供助、貴様はまだ……!」
「俺は友恵の家に行って中を見てくる。何か妖怪の手掛かりがあるかもしれねぇ」
「ならば、貴様が一人で行けばいいの。私と友恵は両親を探しに行く」
「勝手に人様の家に入れるかってんだ。それに、友恵が居ねぇでどうやって家に入んだよ。なぁ、友恵?」
供助の相変わらずの態度に、猫又は再度怒りが込み上げてくる。
が、友恵の事を考えて耐え、抑える。
「う、うん。泥棒に入られないようにお家の鍵は閉めてきたよ」
「友恵もこう言ってんじゃねぇか。夜の散歩はお前ぇ一人で行ってこい」
「……解った。私が一人で探してこよう」
しょうがなく、猫又が折れた。
猫又は友恵の両親を見付けて安心させてやりたいと思っている。だが、供助の言っている事も正しいのも承知していた。
どちらも正しく、どちらも重要。このまま言い合っても互いの意見は変わらないだろう。時間も勿体無い。
ならば、自分が妥協すべきだと猫又は判断した。それに、とうに陽は暮れて空は真っ暗。友恵を夜の街に連れて歩くのはあまりいい事とは言えない。
「決まったな。友恵、お前の家に行くぞ」
「うん。でも……ネコのお姉ちゃん、一人で大丈夫?」
「心配要らねぇよ。そこいらのノラ猫よか何倍もしぶてぇヤツだ」
「どこぞの阿呆と違うて、私は頭が働くからの。道に迷う事も無い」
供助と猫又。二人は互いに皮肉を言い合い、冷ややかな目を向け合う。
先程のような喧嘩が起こる雰囲気は無いが、重くひりついた空気が流れる。
「はっ」
「ふん」
供助は短く息を吐き出し、踵を返して一人先に公園から出て行く。
数秒後、猫又と友恵は手を繋ぎ、二人も追って公園を後にした。