表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/457

     気掛 ‐ケネン‐ 肆

「で、話は戻るがよ。なんでガキを探していたお前がなんで学校に居んだよ」

「うむ? あぁそれはの」


 顔はそっぽを向けたまま、横目で。供助は猫又を見た。


「この学校の前を通り掛かった時に供助の匂いがしての。興味心から覗いてみたら……」

「追っかけ回された、と」

「うむ。最初は数人に撫でられる程度だったんだがの、段々と数が増えてもみくしゃにされてのぅ」

「この学校は女生徒も多いからな」

「好奇心は猫をも殺すという言葉が身に染みたの」


 ぐったりと。耳と尻尾を下げ、猫又は疲れた様子を見せる。


「早く帰れ。見付かったらまた追っ掛け回されるぞ」

「む……それは勘弁願いたいのぅ」

「だったら家で大人しく漫画読んでろ」

「おぉ、そうだった。供助、地獄担任ぬう平の十二巻が無かったの。続きが気になって夜しか眠れん」

「夜だけ寝れれば十分だろうが……そういや地獄担任の十二巻は太一に貸していたな」

「早う読みたいんだがの」

「わぁったよ、近いうちに返してもらう」


 頭を掻きながら、供助は立ち上がる。

 階段の上から下の廊下を見てみると、猫又を探している生徒は居ない。

 話をして時間もある程度経ち、猫又の騒ぎも落ち着いただろう。


「生徒が少ないから外に出やすいだろ。今のうちに早く帰れ、猫又。俺も教室に戻らなきゃなんねぇからよ」

「そうなんだがのぅ……」

「あん? まだ何かあんのか?」

「うむ。実はの、学食というものが気になっての」


 舌をペロリ。猫又は口周りを一舐めする。


「なんでも種類豊富で値段も手頃。学生の味方と漫画に描いてあって興味を持っての」

「……」

「街中を散歩して小腹も空いた。ここは一つ、噂の学食とやらを……」

「猫又」

「ぬ?」

「正直に言え。お前、最初っから学食狙いだっただろ?」

「……てへぺろ」


 三歩。供助は歩いて猫又の目の前で止まり、むんずと猫又の首根っこを掴み上げる。

 片手に黒猫を持ち、無言で階段を降りていく。


「おっ、学食へ行くのかの? 何を食べようかのぅ、迷うのぅ」


 伸びる猫又の首根っこ。

 供助が階段を一段降りる度に、右へ左へと宙で揺れる。


「やっぱり定番のラーメン……カレーライスも捨てがたいの。いや、ここは敢えてカレーうどんもありだの」


 猫又は何を食べようかと舌なめずり。

 階段を降りて廊下に出て、供助は数秒歩いてからすぐに足を止めた。


「猫又」

「のぅ、供助はどちらがいいと思うかの? カレーライスとカレーうどん」


 供助の目の前には窓。鍵を外して外界へと繋がる入り口を開ける。

 今居る廊下は三階。空は青く、とても広い。紙飛行機作って明日に投げたくなる。


「さっさと帰れってんだ、この駄猫!」

「のぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」


 まぁ、投げるのは紙飛行機ではなく黒い妖怪なのだが。

 フルスイングで窓の外へ投げられた猫又は、手足をバタバタさせて空を飛ぶ。

 動物虐待と指を差されそうだが、猫の姿をしているだけで中身は妖怪。なのでノー問題。

 放物線を描いて猫又が着地したのは木の上。枝に引っ掛かって、身体に数枚の葉っぱがくっ付く。


「何をするかの、供助!」


 猫又は態勢を整えながら声を荒げるも、供助は無視して窓を閉める。勿論、鍵も。

 窓の向こうの猫又に対し、供助は(はえ)を払うように手を振る。

 あんなでも猫又は一応妖怪。自分でどうにか出来るだろう。


「これ供助! 触覚前髪! 唐変木! カレーうどん!」


 猫又が何やら悪口を言っているが、供助は気にせず教室に戻る。

 最後のは悪口ではなく食べ物だったが。

 学校に猫又が現れた時は頭が痛くなったが、何事もなく事が済んで助かったと供助は胸を撫で下ろす……が。


「古々乃木君っ! 今までどこ行ってたの!」


 教室前に居た委員長の声を聞いて、また頭が痛くなった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ