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     結果 ‐ケッカ‐ 弐


「オーライ、上出来だ」


 霊印入りの軍手を装備した両手。右手を左手に打ち込み、パンッと小気味の良い音が鳴る。

 予定通り、作戦通り。通路の出入口を両側塞ぐ事で、ババアの動きを制限させる。通路もそう広い訳ではない。これで大きく動き回れず、真っ直ぐしか移動出来ない。

 ババアは先に立つ供助の存在に気付くも、もう遅い。回れ右して戻ろうにも、その先は猫又が居る。

 前門の打撃、後門の爪撃。これであとは供助が殴るか、猫又が切り裂くだけ。


「ケ……ケギッ!」


 ババアが選んだ方向は……そのまま前進。供助の方へと速度を保ってひた走る。

 供助も迎え打たんと腰を落とし、右腕を後ろに引く。左手は相手を捉えるように、前へ出して。

 相手の動きは速い。だが、一方通行一直線なら仕留めるのは容易い。

 大きなまんじゅう頭を揺らし、ババアは不気味に笑い突っ込んでくる。 


「年寄りは年寄りらしく……」


 見ていて気持ちが悪い顔に狙いを定め、右手を力の限り握り。


「縁側で茶ぁでも飲んでろっ!」


 その手をフルスイング。

 フォン、と空気を切る音が聞こえ、次には。


「ケケケ……ケブッ」


 ――――パァン。

 大きな破裂音。風船が割れたような、爆竹が鳴ったような。地下の通路にはよく響く。

 ババアの下顎から上は吹き飛ばされ、ご自慢の白柳ヘアーは見る影もなく。

 供助の数メートル後ろに力無く倒れた。


「手間ぁ掛けさせやがって」


 戦闘態勢を解いて、ごちる供助。

 破壊された妖怪の頭部は辺りの壁や地面に肉片が飛び散った。

 供助の右手に付けた白い軍手も、今は返り血で赤く濡れている。


「ようやく終わったの」


 猫又が肩を竦ませながら供助の元へやってきた。

 妖怪を追い掛け回したせいか、少し疲れた様子。


「あぁ、面倒臭ぇ奴だった」

「ひたすら逃げ回り私達を馬鹿にしていたからの」


 供助は軍手を外し、ズボンの尻ポケットに突っ込む。

 返り血から死んだ妖怪特有の白い煙が出ているも、気にする様子はない。今は血で汚れてはいるが、最後には全部消えて無くなる。

 それに霊感が無い人には妖怪の返り血も、この白い煙も見えない。このまま街を歩いても特に問題は無い。


「それにしても凄い威力だの、供助の打撃は」

「そうか? ま、今までこれ一本でやってきたしな」

「ふむ……馬鹿なのは知っていたが、馬鹿力も備えておったとはの」

「馬鹿にしてんのか?」

「褒めてるんだの」


 猫又は供助の横を通り、仕留めたババアの遺体を見下ろす。

 地面に横たわる遺体からも白煙が立ち上っていた。


「……んし、横田さんにもメールしたし帰るか」


 猫又が後ろを向くと、供助が携帯電話をポケットに仕舞っていた。依頼が完了した旨を、横田にメールしたのだろう。

 供助は踵を返し、外へと繋がる出口へと足を動かす。


「今回のあれはなんだったんだ、あのババアはよ」

「妖怪だの、ババアの」

「ババアなのは解ってんだよ。何の妖怪だったのかを聞いてんだ」


 他に人も居ない地下では、供助達の足音はよく聞こえる。


「紫色の服を着てはいたが紫婆とは違ぇ。山姥(やまんば)か?」

「あの妖怪はあれだの。ほれ、都市伝説の」

「都市伝説?」

「うむ、ジェットババアだの」

「ジェットババアだぁ?」


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