翌日 -ボサコ- 参
◇ ◇ ◇
青々しい春空と、ゆったりと流れる白雲。
昼休みで校舎の色々な場所から賑やかな声が聞こえてくる中、場面は人気のない所へ。
体育館裏にある使われていない花壇の前。少し錆が目立つ古い横長のベンチ座る、一人の男がいた。
サランラップに包まれた、大き目のおにぎり。それをがぶりと一口。
作業の様に黙々と食していく、供助の姿があった。
「あ、いた」
不意に声が聴こえて、供助がその方へ視線をやると。
そこには息を切らした祥太郎が居た。
「途中で見失って少し探しちゃった」
伸びた前髪の間から覗ける供助の目は、一度向けたと思えば興味無さそうにすぐ逸らすのだった。
明らかに供助を追って来たであろうに、特にこれといった反応も返事もしない。
「昨日の事でちょっと話がしたかったから、追いかけてきた……ん、だけど……」
祥太郎は少し気まずそうに視線を右へ左へと忙しなく動かす。
しかも、どこか歯切れが悪い。それもしょうがない。そうなってしまう理由が目に映ってるのだから。
なぜなら供助が座っているベンチの端側に、見覚えのある女子生徒が居た。
そう、昨日倉庫前で囲まれていた時に、ボサ子と呼ばれていた女子だった。
「二人って知り合いだったの、かな……?」
しかし、言葉は返ってこず、供助はおにぎりを。ボサ子は小さなお弁当を。二人は黙々と昼食を食べている。
反応が無い二人への反応に困る祥太郎。苦しい状況に苦笑いを浮かばせつつ、もう少し頑張って対話を試みる。
「それか友達……だったり?」
二人の関係性が気になって聞いてみるも、やはり二人からは何も返ってこない。
苦笑いに加えて冷や汗。祥太郎はこの何とも言えない……いや、何とも言われない息苦しさに困り果てる。
「……どうしよ」
ただでさえインドア気質で意思疎通が得意じゃない祥太郎。
こうして会話をしようとしている時点でかなり勇気を出しているのだが、悲しいかな相手も陰キャ気質。
そんな三人じゃスムーズな会話のキャッチボールは難しかったようで。かといって、このまま戻るのも気まずい。
祥太郎はさらに勇気を振り絞り、会話がダメならと行動を起こす。
供助が座るベンチの隣に並ぶ、もう一つのベンチに腰を下ろした。
「昨日はありがとう。簡単なお礼だけど、これ飲んで」
祥太郎は隣のベンチから身を乗り出して、供助のすぐ横に買って来たお茶のペットボトルを置く。
本当はもうちょっとマシな物でお礼をしたかったが、時間が無くて他に思い付かなかった。
供助は視線だけをペットボトルに向けるが、変わらずこれといった反応を見せない。
「今から教室に戻っても時間勿体ないし、ここで僕もお弁当食べて良いかな?」
「……勝手にしろ」
少し申し訳なさそうに祥太郎が言うと、供助がぶっきらながら初めて言葉を返してくれた。
許しを得たのと、返事をくれたのが嬉しく。祥太郎は頬を僅かに綻ばせて弁当の包みを開くのだった。