翌日 -ボサコ- 弐
◇ ◇ ◇
いつ振りかと考えるくらいに久しい、平凡で平和な学校生活。
つつがなく午前の授業は終わり、学生達の待望の昼休み。仲の良い者同士で机を合わせて昼食を取る生徒や、購買に走る者と様々。
祥太郎は自分の弁当が入った包みを持って、いつも通り別クラスの友人と一緒に食べようと廊下を歩いていた。
すると、タイミング良く友人二人が教室から出てきた。
「お、祥太郎。ナイスタイミング」
「あれ、どうしたの?」
「いやぁ、昼飯を持ってくるの忘れてさ。購買に行くとこ」
財布を片手に、弁当を忘れた失態に肩を落とす友人。
育ち盛りの中学生には致命的なミスである。
「じゃあ僕も一緒に行くよ」
友人二人と共に、購買へと向かって歩く。
教室外の場所で昼食を食べようと移動する者、同じく購買へ向かう者。トイレに向かう者。多くの生徒が行き来している。
「ところで祥太郎、今日は一緒に帰れるんだろ? 昨日はドタキャンしてよー」
「え? う、うん。今日は大丈夫。ごめんね、昨日は」
昨日は友人達に素っ気ない態度を取ってしまった事を思い出し、申し訳なく返す祥太郎。
友人をいじめに巻き込まないようにする為とは言え、やはり罪悪感は感じてしまう。
「もし何か嫌な事されてるんなら言えよな」
「……ありがと。でも、大丈夫だから」
昨日の態度を気にするどころか、逆に気に掛けてくれる友人の優しさが心底嬉しかった。
しかし、下手に頼ってしまえば、この優しい友人もいじめに巻き込んでしまうかもしれない。
それだけは絶対に避けたい祥太郎は、真実を笑顔で隠すのだった。
他愛ない雑談を交わしている内に購買に到着。当然だが、昼飯時なのでやはり混んでいる。
「混んでるなー。先に自販機で飲み物を買っとくか」
混雑が少し収まるのを待ちつつ、購買のすぐ近くにある自販機に移動する。
祥太郎はペットボトルのお茶を買い、次に友人が買い終わるのを待っていると。
購買に集まる人だかりの向こう。ちらりと見覚えのある姿が見えた。
「ご、ごめん! 僕、ちょっと用事があったの思い出した! 悪いけど、昼食は二人で食べて!」
「え? あ、ちょい!」
自販機の前に居た友人に割り込み、急いでお茶をもう一本買うと。返事も待たずに走っていく祥太郎。
残された友人二人は理由を聞く間もなく、人だかりの先に消えていく祥太郎を目で追うしかなかった。