表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
432/457

     車内 -キョカ- 肆

「猫又、人型に戻ってお前も荷物持て」

「りょーかいだの」


 後部座席でボフン。猫から人の姿になってから、車から降りる猫又。

 もう夜中の住宅街とは言え、人の目があるかもしれない。一応用心しての車内での変身。

 供助と和歌はトランクを開けて、積んでいた各々の荷物を下ろしていく。


「手伝うっスか?」

「いや、大丈夫だ」


 南が運転席から気に掛けてくれるが、わざわざ車から出させるのも悪い。

 それに三人も居れば一人でも十分。ぱぱっと済ませて、トランクのドアを閉めた。


「送ってくれてあんがとな。助かった」

「いいッスよ、これくらい。古々乃木先輩と旅行に行けて楽しかったッス!」

「色々ありすぎた旅行だったけどな」

「ま、あれはあれで、あたし達らしい旅行だったって事で」


 疲れた顔で肩を竦める供助に、南は運転席の開けた窓から八重歯を見せて笑って返す。

 まさか旅行先であんな大事に巻き込まれるとは誰が思っていたか。

 楽しくもあったが大変でもあった。色んな意味を含めて、記憶には残るだろう。


「せっかくの旅行だってのに、ゴタゴタがあって悪かったな。祥太郎」

「そんな事ないよ。すごく楽しい旅行だったし、きっと一生忘れられないよ」

「そりゃ違ぇねぇ」

「遊び疲れで寝坊して、明日学校に遅れないようにね」

「起きれる自信無ぇなぁ」


 助手席に座る祥太郎へと、半目で怠そうに会話する供助。

 明日からまた学校だと考えると億劫で仕方ない。


「鈴木さんも気を付けて帰ってね。って、供助君の家の隣だからすぐそこだけど」

「大森君とは学校では委員会とかで接点があったけど、こうして遊ぶのは初めてだったね。色々あったけど、楽しかったよ」

「供助君も言ったけど、色々ありすぎて大変だったけどね……また機会があったらよろしくね」

「こっちこそ。そっちも気を付けて帰ってね」


 実は和歌と祥太郎、二人はプライベートで遊ぶのは初めて。

 学校ではクラスは違えど、お互いクラス委員長で、なんらかの集まりで顔を合わせて話す事は多かった。

 学校での接点はあったものの、それ以上でもそれ以下でもなかった二人。共通の友人を通して交友が広がるのは、珍しい事でもない。


「そんじゃな、和歌。作ってくれた飯、めっちゃ美味かったわ。また食わせてくれな」

「はい、喜んで。今度は南さんが好きそうなおつまみを調べて、作れるようになっておきますから」

「お、そりゃ嬉しいねぇ。今度こっちに来る時の楽しみが増えるってモンだ」

「ふふっ。お仕事が大変だと思いますけど、怪我とかには気を付けてくださいね」

「おうよ。ま、和歌も頑張んな。色々とよ」


 別れの挨拶を、笑顔で交わしていく。

 最初に出会った時に、南が和歌にガンくれて脅していたのが懐かしい。

 まぁ南は目付きと見た目は悪いが、根は悪くない。一度打ち解けてしまえば、気さくに話せる姉御肌。

 最初は怖くて怯えていた和歌も、今じゃ普通に笑って話せて、料理を振舞ってあげる程に仲良くなっていた。

 仲良くなってまだ日は浅いが、やはり別れには少し寂しいものがある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ