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     宴会 -バーベキュー- 漆

「猫又さん、南さん、ウインナー焼けましたけど食べます?」

「食うー!」

「お、気が利くしゃねぇか」


 仕事関連の長話をしてしまい、その間に席を立っていた祥太郎がウインナーを乗せた紙皿を持ってきた。

 丁度つまみが無くなりかけていたところで、ここでの追加はナイスタイミング。こんがりと焼き目が付いて、香ばしい香りが鼻孔をくすぐる。

 

「なんでこう、バーベキューで食べるウインナーって妙に美味いのかの」

「炭火で焼いてるからってのもあんだろうけど、いつもと一味違うよな」

「焼肉のタレを付けて食べるからではないか? 普段食べる時は大体ケチャップとかマスタードだからのー」

「あー、それあるかもな」


 自分のさらに入っていた焼肉のタレにつけ、二人は焼き立てのウインナーを食べる。

 皮はパリッと、中からは肉汁が弾ける。口内の火傷に要注意。

 しかしまぁ、味の濃くなったウインナーもまだ酒に合う。少し高いウインナーというのも相まって尚更。


「明日で連休も終わりかぁ。今が楽しいだけに、ちょっくら憂鬱になっちまうな」

「なーにが連休だの。昨日の朝には急な依頼が入って、夜に神隠しの一件。名ばかりの連休だの」

「確かにそうだな。実質、丸まる休めてるのは今日と明日だけか」

「早朝の時間まで供助の解毒でてんてこ舞いであったからの、今日も一日まるっと休みかと言われれば怪しいところか。正直、今でも疲れは残っておるしのぅ」

「猫又サンはまだいいさ、あたしなんかは筋肉痛でむしろ体調悪化してんだぞ」


 猫又は妖力が尽きかけてヘトヘト、供助は妖毒で死に懸け、南は戦闘の反動で全身筋肉痛。

 払い屋組の三人は休息どころか、逆に身を削られて疲弊している。慰安旅行とはどこへ行ったのか。

 しかしまぁ、その無理や無茶があったお陰で旨い酒と飯にありつけているのだ。全くの無駄ではなかった事は確かである。


「とは言え、まだ夕方にもなっておらん。まだまだ食材も酒もたんまり。気が向いたらば温泉にも入れる。最後は存分に自身を労おうではないか」

「先の事を憂うよか、今を思いっきり楽しんだ方がいいやな。今夜はとことん付き合ってもらうぜ、猫又サンよ」

「無論、潰れるまで」

「夜は夜で、和歌が余った食材で色々作ってくれるってからなー。バーベキューしてる今からでも楽しみだ」

「日本酒に合う料理に期待だの」



 まだ夕方前で楽しい宴会はまだまだ続く。しかし、着実に旅行の終わりも見えて来ていて。

 だからこそ、楽しい今を目いっぱい堪能して、いつかまた思い出して笑って話し合えるよう。

 年長の二人は静かに互いの缶を小突く。互いへの労いと、継続する宴への仕切り直しも含め。

 あるいは、一人の少年の死を乗り越えた事への安堵と、重圧からの解放を無意識に感じ取ってか。

 二人揃ってビールを煽って、一気に一本を空にする。


「猫又、南ー。ホタテの味付けどうするよ?」


 そこに食材が乗ったトレイを見せながら、二人に聞いてくる供助。

 殻付きの大きなホタテ。これまた食いでがありそうで唾が出る。

 勢い良く缶から唇を話し、二人が同時に返す答えは。


「当然バター醤油だの!」

「あたしは酒蒸し一択ッス!」


 見事にバラバラ。ウマが合っても、味の好みは違う。それぐらいが丁度良い。

 どっちも合わせるでも、どっちかに合わせるでもない。どこかしらが合う。この距離感が大事。

 好きな味で好きなように。飲んで食べて、喋って笑って。

 色々と巻き込まれて大変だった旅行だったが、万事解決。あとは楽しむだけ。



 とりあえず、お疲れ様。


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