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     鎌鼬 ‐カマイタチ‐ 弐

「猫又、同じ妖怪なんだから話せたりしねぇ?」

「お前はイルカや鯨と会話は出来るかの?」

「どういう意味だ?」

「同じ哺乳類だからと言って言葉が通じるか、と言っておるんだの」

「……なるほど、解りやすい返答どうも」


 同じ妖怪と称されていても、中には話が通じない相手はいる。

 現に人間でも国が違えば話が通じない。それと似たようなもの。

 逆に言ってしまえば、こうして人間と妖怪が話している時点で種族など関係無いような気もするが。

 要は向こうに話せる程の知能があるかどうか。


「キキ――キッ!」


 動物のような鳴き声。それと同時。

 供助と猫又の会話を遮るように、一匹の鎌鼬が前足を(かざ)して突進してきた。


「うおっとぉ!?」


 咄嗟に身体を捻り、鎌鼬の攻撃を避ける供助。

 すれ違いざまに目前を、淡い光を放つ一線が通り過ぎた。

 攻撃を避けられた鎌鼬は、供助の十メートル程後ろに着地する。


「ビビった……予想以上に速ぇな、動き」

「相手は鎌鼬、当然だの。名の由来の一つに、“構え太刀”から来ているとも言われておる。切れ味も侮らん方がいいの」

「わってるつの」


 供助は後ろに振り向き、攻撃してきた鎌鼬へと身体を向ける。

 猫又は一方の鎌鼬から目を離さず。二人は背中合わせで言葉を交わす。


「言葉は通じねぇし暴力的。説得は出来なさそうだ。んじゃ、祓っちまう前に……」

「うむ、そうだの」


 二人は互いに向き合う鎌鼬へ。


「おい、お前」

「のう、お前」


 霊気と妖気。混ざり合わさり反発し。肌がひりつき、空気が張り付き。

 鎌鼬が――――たじろぐ。


「人喰いを知ってるか?」

「共喰いを知っておるかの?」


 言葉が重なる。二人の言葉が。

 なんて事は無い。普通のトーンで、普段の声量で。

 なのに、今居るこの部屋。この空間に見えない圧迫感が襲う。


「キ、キキ……」


 二人の静かな威圧感に、鎌鼬二匹は半歩足を引き、怯む。

 胸から背中へ突き抜ける何か。鎌鼬の感情には、恐怖が占めていく。


「……ま、答えれる訳無ぇよな。話せねぇんだから」

「うむ。期待はしていなかったがの」


 なのになぜ聞いたのかと言えば、供助はもう妖怪や霊を祓う時の通過儀礼になっていた。

 猫又はと言うと、ダメ元で一応、といった感じだった。


「んじゃ、本題に入るか」

「そうだの。私も早うこの埃臭い場所から去りたいからの」


 供助は指の関節を鳴らし。猫又は組んでいた腕を解き。

 二人は戦闘態勢へと入る。


「ノルマは一人一匹だ。簡単なモンだろ?」

「うむ。余裕だの、この程度」


 人間は霊力を両手に込めて握り締め。

 妖怪は妖気を放ち、爪を剥き出す。


「キキ、キ、キキ……」


 二人の雰囲気に圧倒され、鎌鼬は完全に飲まれている。

 だが、無理矢理に恐怖を振り払い、両手を再び構えた。


「寝床に入られた上に、大声を出すような真似をされて怒るのも無理はねぇが……力量差が解らねぇでもねぇだろうに」

「ふん、中途半端に力を持つ者ほど矜持が高い。命よりも面子を優先するあたり、矜持に反して知性は低いようだの」

「きんじ? なんだそりゃ?」

「……矜持に関係無く知性が低い奴もいるがのぅ」


 背中越しに、供助へと脱力した目線を送る猫又。


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