宴会 -バーベキュー- 参
猫又の例えを聞いて、供助のタフさに呆れるやら感心するやら。
しかし、普通に歩き回れても消費した体力は減ったまま。いつも以上に飲み食いしているのはその為である。
「って、ちょっと待てよ、猫又サン」
「ぬ?」
猫又がビールを飲もうとするも、南の声によって缶が唇に触れる寸前で止められる。
「古々乃木先輩のタフさはまぁ、前から分かっちゃいたけどよ。畜霊石を飲み込んだのに、なんであたしみてぇに反動が無ぇんだ?」
「そういえば南には反動あるのだったな。確か筋肉痛だったか」
「今でも全身バッキバキで痛ぇわ。でも、古々乃木先輩は筋肉痛になってる素振りは全く無ぇよな?」
「それは恐らく、霊力の元の総量差だろうの」
「元の総量差ぁ?」
この言葉だけではいまいちピンと来ていない南。
猫又は飲み損ねた一口を口に含んでから、続きを話す。
「南が畜霊石を飲んで反動が起こる原因は、畜霊石から得られる霊力量が南自身の器を超えてしまう過剰摂取……つまりキャパオーバーによるものだの」
「それはあたしでも分かってンよ。そのお陰で、一時的に霊力を気にじねぇで肉弾戦が出来てるんだからな」
「しかし、供助の場合は少し条件が違う。条件と言うより前提、と言うべきかの」
猫又はおもむろに、まだ開けていない500mlの缶を南の前に置く。
「これが霊力が補充された畜霊石だとして、こっちの350ml缶が南。この南の缶が空っぽになって、畜霊石の缶の中身を移そうとすれば……」
「入りきらずに零れる。それが反動の筋肉痛だってンだろ?」
「そう。つまり、対して供助の器はこの500ml缶を優に入る大きさだと言う事だの。だから溢れる事も無く、反動が起こる事も無い。供助はスタミナ馬鹿だからの。あの程度じゃあ何ともなかろうて」
「つってもよ、畜霊石には結構な量と密度の霊力が入ってたぜ?」
「その結構な霊力でも、供助にとっては取るに足らない量だと言う事だの」
「ちなみに、古々乃木先輩の器ってどんぐらいの大きさだと思う?」
「さぁ、明確に測る方法がないかのぅ……」
南の問いに、顎に手を当てて考える猫又。
良く考えてみれば実際、供助が完全に霊力を底突かせた所を見た事が無いのだ。
尽きそうだと思ってからが、長い。底力と言うか、地力が強いと言うか……とにかく、終わり欠けからが長いのだ。
「正直、貯水タンクと言われても不思議ではない」
「もはやmlどころの話じゃねぇ」
「文字通り、桁が違う……という事だの」
「……化けモン、だな」
「本当にの」




