宴会 -バーベキュー- 弐
◇ ◇ ◇
バーベキューが始まって一時間ほど。
一頻り騒いで飲み食いし、ハイテンションだったのは落ち着いて、緩やかな時間が流れていた。
満腹ではないが長く楽しめるように食べるペースを落とし、食事よりも雑談へとメインが切り替わり始めた。
椅子を持ってきて座る祥太郎と、その隣の南。今回の事を振り返りつつ、旅行が終わりに近づいている事を感じ始めるのであった。
「色々あって大変だったけど、この旅行も明日で終わりかぁ」
「旅行ってのは楽しい事だけより、多少辛い部分があった方が記憶に残るって言うからな。それが本当だったら、今回のはそう簡単にゃ忘れられそうにねぇな」
「楽しい辛い云々は抜きで、印象が強い出来事ばかりで……僕は一生忘れそうにないですよ」
「あっはっは、良かったじゃねぇか祥太郎! 一生モンの思い出作りが出来てよ!」
「全部が無事に終わったから良かったですけど、一時はどうなるかヒヤヒヤしました……」
酒も入ってご機嫌に笑う南だが、祥太郎としては肝を冷やす場面が多くて神経が擦り減る思いだった。
終わり良ければ全て良し、と言うが、終わりが良くても過程は消えない。
友人が目の前で死に懸けるなんて経験、二度と御免だ。心臓がいくつあっても耐えられない。
して、その死に懸けた友人――供助はと言うと。
「和歌、その焼き鳥も食っていいか?」
「うん、焼けてるから大丈夫だよ。野菜は?」
「食う」
炭コンロの近くに椅子を置いて、今だに一人、ペースを落とさず食べ続けていた。
「にしても供助の奴、随分と食うなぁ」
妖毒から快復し、元気になったのは喜ばしいが……あまりの食いっぷりに、太一は驚きと呆れが混同した表情をさせている。
太一は少し箸休めし、猫又の隣に座ってテーブルに頬杖して。
猫又もまた、供助の様子を眺めながら銀色の缶で喉を鳴らす。ちなみにこれで五本目。
「ま、当然だろうの。むしろ、あれくらいの食欲があって安心すべきだの」
「安心って……あんだけ食ってんのに、大丈夫なんですか? 昨日だって死に懸けてたのに……」
「死に懸けたからこそ、だの」
「どういう事です?」
いつもの倍以上は食べている供助。
さすがに少し心配になっていた太一だったが、猫又の言葉に疑問を抱く。
「解毒する際に、供助は莫大な霊力は発していただろう? それによって消耗した体力を回復しようとしているんだの」
「やっぱり、あの方法って結構無理があったんだ」
「一番安全な方法ではあったが、体への負担は相当だの。例えるなら、インフルエンザで弱っている時に無理矢理100メートルを全力疾走させて治したようなものだ」
「本当にかなりの荒療治だったんですね……」
「と言うか、あれだけの霊力を放って普通に動けとるのが信じられん。どんだけ霊力バカなんだの、供助は」
「そんなに供助が動けてるのが凄いんですか?」
「太一はインフルエンザで寝込んで、ようやく熱が下がった時、すぐに動けるか?」
「いや、熱が下がっても怠さとか残ってますからねぇ……歩けるけど面倒、って感じですかね」
「熱が下がる前に100メートル全力疾走して、数時間後にピンピンしている。それがアイツだの」
「……化け物ですね」
「本当にの」