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     神事 -タビダチ- 陸

「猫又さん、南さん。二人には特に助けてもらいました。どうか末永くお元気で」

「おう、そっちもな。悠一と仲良くやってけよ」

「うむ。私も神と友人関係になったのは初めての経験であった。結果的に手を貸して終わったが、人を守ろうとした二人は立派な神様だの」

「そんな……私達は感情で動く、半人前の神様です」


 自分達の実力不足、経験不足を目の当たりにした今回。

 己の未熟さを痛感させられ、結花は軽く俯いた。


「なら、丁度良いではないか」

「え?」

「夫婦神なのだ。半人前が二人、合わせれば一人前。それで良いではないか」

「……ありがとう、ございます」


 結花は顔を上げて、交互に二人と握手していく。

 今回の一件で、女性でありながら体を張って解決に助力してくれた二人。

 神とは言え、結花も女。同性である二人の強さ、心の芯にある信念を全うする姿には、尊敬を抱くには十分だった。

 自分も揺るぎない信念と、揺るがない心を持って精進していこうと。結花は静かに誓う。

 そして、最後は――。


「一番仲良くしてくれてありがとうね。和歌ちゃん」

「うん、うん……たった一日だけだったけど、色々あって、色々起こって……でも、楽しかったよ」

「私もだよ。私も、楽しかった」


 最後の別れでは泣くまいと。

 二人とも必死に涙を堪え、優しく抱き合った。


「じゃあ、ここでお別れ」

「え? お焚き上げは参道でやるんでしょ? そこまで一緒に行くよ」

「んーん、あっちは沢山の人がいて混んでるから。それに、ここの方が空に昇った煙が見えやすいでしょ?」


 そう言って、結花が見上げる空は青く晴れていて。旅立ちには格好の日和だった。

 悠一と結花は手を繋ぎ、踏ん切りを付けるように大きく息を吸った。


「会える事はもうないだろうけど、みんなの事はずっと忘れない」

「人の強さ、誰かへの優しさ。私達は覚えてるから」


 二人の姿は風景に溶け込むように、段々と透けていく。


「じゃあな」

「さようなら」


 その言葉を最後に。

 二人は振り返って背中を向け、参道の方へと歩み出す。

 人と人の間を縫うように、人混みの中へと溶け込んでいった。


「あ、見て。もう煙が昇り始めてる」


 和歌が顎を上げて空を見上げると、神楽殿の屋根の上を微かな風に揺らされて。

 白い煙が悠々と高く昇っていく。どこまでも、どこまでも。

 たった一日だけの友人であったが、それでも繋がれた絆は確固たるもの。

 見送る白煙は、二人を次なる修行場所へ導かんと風と共に流れゆく。

 その場にいる全員が、二度と会えぬ友人の武運を祈って。


「頑張ってね」


 和歌がぽつり、小さく呟くと。煙の先端がキラリと二つ。

 まるで手を振っているかように、何かが小さく光って見えた気がした。


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