神事 -タビダチ- 伍
悠一と結花。二人は寂しさを噛み締めて、強がるように小さく微笑んだ。
「何度も言うけど、本当にありがとうな。太一、祥太郎、供助。昨日知り合ったばかりなのに、こんなに良くしてもらって……」
「なーに言ってんだよ、悠一。時間の長い短いは関係無いって。二年間の長い時間があっても、同じクラスで友達が俺と委員長しかいねぇ天邪鬼も居るんだ」
「おい太一、天邪鬼ってぇのは俺の事か?」
「供助以外の誰が居るんだよ。もう少し協調性を持て、お前は」
「スーパーで安売りしてたら買っといてやるよ」
最後のお別れだというのに、太一と供助はいつもと変わらず、いつものやり取り。
その様子を見て悠一は、少し寂しそうに笑って肩を竦めた。
「それじゃあね、悠一君。僕もあまり役立つ事は出来なかったけど……修行、頑張ってね」
「あぁ。人間に泣きつくような事はしない、立派な神になるよ。あと祥太郎、お前だってしっかり役に立ってたじゃないか」
「え?」
「目立つような事じゃないけど、所々で周りを上手くコントロールしてただろ。気付かれにくい気遣いが出来るのは大切な事さ」
「そう、かな? 僕は意識してなかったけど……」
「そういう能力は将来、仕事で部下を持った時に重宝する。その気配りを忘れるな」
「うん!」
これから長い旅に出て、新しい修行場所を探しゆく友人を励まそうとしたのに。
逆に励まされてしまった祥太郎だったが、それは悠一からのお礼というのも含んでいたのだろう。
「ほら、供助君も。最後なんだから何か言いなよ」
「あぁ?」
特に声を掛ける様子も見せていなかった供助に、祥太郎はそれを見逃さず。
悠一が言った気遣いというのがこの事。今も祥太郎本人は気付いていないが、こういう察しの良さというか、気配りに長けているのだ。
しかし、供助は頭をぶっきらに掻いて面倒臭そうな反応。そんな供助に視線で圧を送る祥太郎と太一。
さすがにそれを無視は出来なかったのか、小さく溜め息を吐く。
「ケガレガミみてぇな神様にならねぇよう祈っとくよ。お前を相手にすんのは面倒そうだ」
「そっちも神様からバチが当たるような人間にならないようにな、供助」
怠惰的で素っ気ない供助の態度も、今では慣れて愛着がある。
皮肉めいた言葉を贈られ、悠一もまた同じような言葉を贈り返す。
供助の遠くもなく近過ぎない、この独特な距離感に心地良さを感じているのも本音だった。
こんなやり取りも最後。少し、名残惜しい。




