表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
410/457

     神事 -タビダチ- 伍

 悠一と結花。二人は寂しさを噛み締めて、強がるように小さく微笑んだ。


「何度も言うけど、本当にありがとうな。太一、祥太郎、供助。昨日知り合ったばかりなのに、こんなに良くしてもらって……」 

「なーに言ってんだよ、悠一。時間の長い短いは関係無いって。二年間の長い時間があっても、同じクラスで友達が俺と委員長しかいねぇ天邪鬼も居るんだ」

「おい太一、天邪鬼ってぇのは俺の事か?」

「供助以外の誰が居るんだよ。もう少し協調性を持て、お前は」

「スーパーで安売りしてたら買っといてやるよ」


 最後のお別れだというのに、太一と供助はいつもと変わらず、いつものやり取り。

 その様子を見て悠一は、少し寂しそうに笑って肩を竦めた。


「それじゃあね、悠一君。僕もあまり役立つ事は出来なかったけど……修行、頑張ってね」

「あぁ。人間に泣きつくような事はしない、立派な神になるよ。あと祥太郎、お前だってしっかり役に立ってたじゃないか」

「え?」

「目立つような事じゃないけど、所々で周りを上手くコントロールしてただろ。気付かれにくい気遣いが出来るのは大切な事さ」

「そう、かな? 僕は意識してなかったけど……」

「そういう能力は将来、仕事で部下を持った時に重宝する。その気配りを忘れるな」

「うん!」


 これから長い旅に出て、新しい修行場所を探しゆく友人を励まそうとしたのに。

 逆に励まされてしまった祥太郎だったが、それは悠一からのお礼というのも含んでいたのだろう。


「ほら、供助君も。最後なんだから何か言いなよ」

「あぁ?」


 特に声を掛ける様子も見せていなかった供助に、祥太郎はそれを見逃さず。

 悠一が言った気遣いというのがこの事。今も祥太郎本人は気付いていないが、こういう察しの良さというか、気配りに長けているのだ。

 しかし、供助は頭をぶっきらに掻いて面倒臭そうな反応。そんな供助に視線で圧を送る祥太郎と太一。

 さすがにそれを無視は出来なかったのか、小さく溜め息を吐く。


「ケガレガミみてぇな神様にならねぇよう祈っとくよ。お前を相手にすんのは面倒そうだ」

「そっちも神様からバチが当たるような人間にならないようにな、供助」


 怠惰的で素っ気ない供助の態度も、今では慣れて愛着がある。

 皮肉めいた言葉を贈られ、悠一もまた同じような言葉を贈り返す。

 供助の遠くもなく近過ぎない、この独特な距離感に心地良さを感じているのも本音だった。

 こんなやり取りも最後。少し、名残惜しい。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ