神事 -タビダチ- 弐
悠一の言う通り、片方の三方の上には赤と青の色が目立つ、手裏剣の折り紙が置かれていた。
猫又が納得いったと頷くも、意味が分からんと供助が口を開く。
「どういうこった?」
「折り紙の手裏剣の作り方を思い出してみるんだの」
「覚えてると思うか?」
「……思えんのぅ」
供助が折り紙の作り方などを覚えている筈もないと、猫又は小さく溜め息を吐く。
その横で、意味に気付いた和歌が声をあげた。
「あ、そっか。手裏剣は二枚の折り紙を使うから……」
「そうだの、手裏剣は二枚で一つを作る。夫婦神と共通しておろう?」
去年の祭りで依り代を手裏剣にしたのは偶然だったのだろうが、そこに悠一と結花の夫婦神が降りるのは必然だったのだろう。
これも縁、それも縁。合縁奇縁。
「はー、なるほどね。そういう意味だったのか」
「お前が知らなかったのかよ」
「いやぁ、こっちとしては用意されてた物に入らざるを得ないからなぁ。意味とか考えなかった」
今の今まで気にもせず、知らなかった悠一。
そんな適当な神様に太一は、呆れた笑み返すのであった。
そして、ご当地のお勉強コーナーもそろそろ終わりの時間。
神楽殿で雅楽を奏でていた者と、迎えの舞をしていた者。全員が役目を終えて、奥の方へと帰っていく。
「お、演奏が終わった」
「じゃあ引き継ぎも終わったかな。なら結花もすぐにここへ来る筈だ」
興味が無く暇だった時間が終わり、やっとか。と漏らす太一。
悠一は軽く辺りを見回して、そろそろ来るであろう結花の姿を探すと。
グランチェック柄のワンピースを着て、束ねられた肩までの髪を揺らして走り寄ってくる一人の少女を見付けた。
「和歌ちゃん! みんな! 来てくれたんだね!」
「結花ちゃん、待ってたよ」
結花は一番仲が良かった和歌へと近寄り、全員が揃って見送りに来てくれた事に顔を綻ばせた。
「引き継ぎは大丈夫だったか?」
「うん、特に問題なし。神隠しの一件が解決出来てなかったら、こんなスムーズにはいかなかったわね」
もしもまだ神隠しの件が未解決で続いていたなら、今頃は引き継ぎの時点で来たばかりの新神は泣いていただろう。
新卒で入社したら、研修期間の無くいきなり一大プロジェクトを一人で任され、さらには失敗すれば信用はガタ落ち。
そんなんされたら誰だって泣く。神だって泣く。
「あと少しでお前達とはお別れだ。本当、感謝してもしきれない」
「みんな、ありがとうね。心からお礼を言わせて」
悠一は苦笑を浮かばせ、結花は頭を下げて。
この町の危機を救ってくれた供助達に、二人は心の底からの感謝の言葉を贈るのだった。
同時に、見習いとはいえ神様としての不甲斐なさを痛感せざるを得ない。




