雅楽 -マチボウケ- 参
「なぁ、いつになったら終わんだ? いい加減ヒマなんだけどよ」
変わり映えしない景色に暇を持て余し、眠そうに愚痴る供助。
この様な神事に興味などある筈もなく、終始気怠そうにボーっとしていた。
そんな供助の隣に居た祥太郎が、スマホを見ながら供助に返す。
「まだ十一時半にもなってないから、あと三十分は続くんじゃないかな。予定だと最後の神事が正午らしいし」
「マージか、面倒くせぇ……」
いやもう本当、心の底から面倒臭いと。知り合いの神様との別れだとか忖度なく。
供助は大きな溜め息を隠しもせず吐いた。
「あ、供助君。神主さんが祝詞を読むのやめたよ」
「あん?」
和歌が指差した方を見ると、神楽殿の中央に立っていた神主が奥の方へと戻っていく姿があった。
しかし、それで終わりな訳がない。入れ替わりで神楽装束に身を纏った人が、十人ほど神楽殿へと入ってきた。
「なんか楽器みたいなの持ってる」
「ああ、あれは雅楽に使用する楽器だの」
「知ってるんですか? 猫又さん」
「軽くだがの。主に管楽器、打楽器、弦楽器の三種類で演奏するのが一般的での」
「一般的? 他にもあるんですか?」
「まぁ神事の種類や大きさ、地域や神社によって変わると聞く。私も大まかにしか知らんのでの」
「へぇ」
猫又に教えられて和歌が再び神楽殿を見ると、確かに三種類の楽器を設置し始めている。
管楽器は笙、篳篥、龍笛の三つ。打楽器は太鼓、鉦鼓、羯鼓の三つ。弦楽器は琵琶、筝の二つ。
それらを用いて雅楽は演奏される。猫又が言った通り、この型が正しい訳ではなく、地域や神事によって多少の違いはある。
そんな説明を聞いて供助は全く興味は湧かなかったが、分かった事がひとつ。
「当分はヒマが続きそうだ……」
まだまだ続く虚無に、供助はげんなりと肩を落とす。
楽しくも興味も無いものを長時間見せられるなど苦痛でしかない。
「眠気覚ましにちょっくら飲みもん買ってくるわ」
「あ、じゃあ俺も行くわ。暇すぎる」
供助と太一は飲み物を求めて、人込みを抜けて出店がある境内へと歩いて行った。
こういうイベントには特に興味が薄い二人。長い時間じっと見ていろというのが難しい話だ。
和歌と祥太郎は少し興味があるのか、文句ひとつ言わずに雅楽を見ている。猫又は興味半分、人込みの中を歩きたくないが半分。南は筋肉痛でなるべく動きたくない。
とりあえず待ち人である悠一と結花が来てくれないと話にならない。
暇を持て余すのもなんだと、南がふと疑問に思った事を口にする。




