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     雅楽 -マチボウケ- 弐

「けどま、あたし等が首を突っ込んでなけりゃあ結果はどうあれ、あと数日で払い屋へ依頼が入って神隠し事件は解決してただろうしな」

「……? なぜそう言えるんだの?」

「警察が重い腰を上げて協力を頼んでくんのさ。都会やデカい署がある所は早い段階で協会(ウチ)に協力の要請が来るが、ここみたいな田舎より少し栄えた程度の町じゃいつも後手後手になンのがパターンなんだよ」

「意外だの。警察から払い屋に仕事を頼む事があるのか」

「ああ、意外とあるぜ、警察からの依頼。公にはなってねぇが、警察にも払い屋の存在を知ってる人がいんだ。奇怪で奇妙な事件ほど依頼が来る」

「まぁ言われてみれば、一般常識から外れた異様な事件が起こるのも珍しくない。そういう時は専門家に頼むのが一番だの」

「もう少し騒ぎがでかくなってりゃ県警より上の管区警察局が動いて、そこでようやく電話が鳴らしていただろうな」

「子供が三人も攫われておったのだぞ? それより事が大きくならんと動かぬのか……」

「県警と管区警察局とで連携が取れてねぇのさ。派閥やメンツってのでな。田舎の警察だと特に腰が重いんだよ」

「人の命が危ないと言うのに、メンツも糞もなかろう」

「ま、こういう類の事件の原因が幽霊や妖怪だなんて、普通の人にゃあ信じられねぇのが普通だ。そんな嘘臭い原因の為に胡散臭い所に協力を頼むなんて、頭の固ぇ田舎のお偉いさんは簡単に首を縦に振れねぇのさ」

「もっと払い屋が世に知られていれば偏見も無くなるが、職業上では公になりたくない。ジレンマだのぅ」

「今思えば、迎えの車ン中でオーナーが言いかけてたのぁ……これの事だったんだな」


 南は噂話の話題で話していた時に、オーナーがばつが悪そうに話を止めたのを覚えていた。

 神隠しという奇怪な事件が町で起きているのを黙っていたのは、恐らくだが依頼以外の事で供助達に手を煩わせないようにした、オーナーの気遣いもあったのだろう。

 本来の目的は依頼だが、慰安旅行も兼ねて来てくれたのをオーナーは知っている。そこで変に気掛かりになるような事を言い、楽しい観光を阻害する真似はしたくなかったのだ。

 供助達はペンションの悪霊を祓いに来ただけで、それ以上の依頼も頼んでいないし、金も払っていない。

 本来の仕事以外の事に巻き揉むような契約外の事は避けたいという、思慮分別を明確にしているオーナーの信条でもあった。

 まぁ結局は見事に巻き込まれて事件解決までしてしまった訳だが。


「そういえば、祭りに行こうとペンションを出た時にオーナーに会ったが……当然ながら怪しまれとったのぅ」

「あー、ありゃ完全に怪しんでたな。あたし等が来た翌日に神隠し事件は解決されて、朝会った時にはあたしや古々乃木先輩は傷だらけと来た。そら何かあったと思うのが普通だわな」

「適当に流して誤魔化したが、あのオーナーは勘も良さそうだからのぅ」

「気付いていようが気付いてなかろうが、あたし等が解決したって証拠が無ぇんだ。適当に流してりゃ問題無ぇよ」


 神社では煙草が吸えず、そろそろ口が寂しくなってきたのか。南は下唇の辺りを摩りながら会話していく。



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