目覚 -アサメシマエ- 弐
「他の奴等は?」
「皆は疲れて寝てる。最初は太一君と大森君が供助君を見てたんだけど、十分くらい前に私と交代したところ」
「俺が寝てる時に、んな事までさせちまったのか……迷惑かけ過ぎたな」
「すごい心配はしたけど、誰も迷惑だなんて思ってないよ……って、みんなに供助君が目を覚ましたって教えなきゃ!」
「あー、いいって。みんな疲れてんだ、変に起こさねぇで寝かせとこう」
「でも、みんな心配してたし……」
「別にいま無理矢理に起こしてまで教える必要ねぇだろ。寝たいだけ寝て起きてからでも大して変わらねぇよ」
「……わかった。供助君がそういうなら」
本当は今すぐに知らせたい和歌だったが、供助が言ってる事もわかる。
昨晩の事で全員が疲れ切っていて、特に猫又と南の疲れ具合は顕著である。
若干渋々といった様子ではあるが、和歌は小さく首を縦に振った。
「ところでよ、和歌。ちょっと頼みがあるんだけどよ」
「なに?」
「腹ぁ減ってやべぇんだ。何か飯作ってくんねぇか?」
「あ、うん! あまり食材無いから簡単な物になるけど……」
「腹に入れられて栄養になりゃ何でもいい」
「急いで作るから、ちょっと待ってて!」
和歌は眼鏡を掛け直して、スリッパをパタパタと鳴らしてキッチンに戻っていく。
供助がふと壁時計に目を向けると、針は朝の八時を過ぎたところを差していた。
普段ならば太一達も起きて朝食を摂っているいる時間だが、やはり昨日の一件の後じゃあ起きれないのも無理はない。
供助はソファから足を下ろし、フローリングの冷たさが足裏に伝わる。
バルコニーに出られる引き分け窓に掛けられたカーテンの隙間から、一筋の光が部屋に差し込んでるのが目に入って。
「和歌、ちょっと外の空気を吸ってくる。飯が出来たら呼んでくれ」
「いいけど……大丈夫?」
「そこのバルコニーに出るだけだ。死にゃしねぇよ」
供助は立ち上がってカーテンを開けると、燦々とした朝日がペンションの広間を眩しく照らした。
「いーい天気じゃねぇか」
空は青く晴れて、程よく雲が浮かんでる。
朝の清々しい空気を大きく肺に入れ、供助はゆっくりと吐き出す。
町から少し離れて、ペンションの周りは木に囲まれている。それもあってか少し空気が綺麗な気がしないでもない。
「よっ、供助」
「ん? ああ、悠一か」
バルコニーの手すりに寄っ掛かっていると、玄関の方から名前を呼ばれた。
そこには昨日と同じく甚兵衛の格好をした悠一が、小さく手を挙げて歩いてくるのが見えた。




