第百話 金色 -テガカリ- 壱
「あっ! す、すいません! テレビ通話なのすっかり忘れてました!」
聞こえてきた音声に謝りながら、和歌はすぐさまソファの方へカメラを向けた。
すると南は親指で眠る供助を指して、向けられたカメラへと話しかける。
「見えてる通りだ、横田さん。解毒は無事成功して、古々乃木先輩は助かりました」
『さっきからずっと画面が真っ暗で、おじさん寂しかったよ』
「何言ってんですか。そっちはずっと画面真っ暗じゃないですか」
『冗談はさて置いて、あの霊力の量だ。妖毒も裸足で逃げて消滅しちゃうでしょ』
「ほんの少しですが、古々乃木先輩が目を覚まして会話も出来てました」
『聞こえてたよ。その様子じゃ後遺症の心配も無さそうだ。俺も一安心だよ』
「もし何かあった時は、またすぐ連絡しますんで。ありがとうございました」
『ぶっちゃけ俺、あんま役に立ってなかったけれどね。君達も疲れたろ。時間も時間だ、ゆっくり休んでちょうだいよ』
「いやもうヘロヘロなんで、爆睡決め込めたいと思います」
『あっはは、俺は仕事残ってて寝たいけど寝れない。悲しいけどこれ、残業なのよね。あ、それとあとで今回の経緯をちゃんと聞かせてもらうからね。んじゃ、ばーい』
最後に悲愴のセリフを残して、横田との通話は切れた。
もう早朝と言える時間になるのに、まだ残業している横田。中間管理職って大変。
「っはー。ようやく一件落着、だな」
「そうですね。供助君が無事で本当に良かったです」
和歌は南にスマホを返し、安らかな寝息を立てている供助の寝顔を見て一息つく。
「額に“肉”とでも書いてやろうかのぅ」
猫又に至っては緊張からの解放で、多少テンションが高くなってイタズラしようと目論んでいる。
が、近くにマジックペンが無くてすぐに諦めていたが。
「とは言え、毒が消えても病み上がり。一応、誰か一人は起きて供助を見ていた方が良いだろうの」
妖毒は綺麗に消えて、あとは供助の回復を図るだけ。だが、この後も本当に何も起こらず、完全に後遺症が無いとも言い切れない。
用心して誰かは一緒に付いていた方が安全だろう。
そして、猫又の提言に一早く手を挙げたのが太一と祥太郎だった。
「それなら俺がやる。ほとんど見てるだけだったし、これぐらいは手伝わせてくれ」
「太一君ひとりじゃ大変だろうから、交代で僕も見てるよ」
ケガレガミと天愚との戦闘に、供助の解毒治療。その両方で何もできなかった負い目もあってか。
二人は自分達でも何か手伝える事が欲しかった。簡単な事でも、些細な事でも。友人を救う手助けがしたかった。
「そうか。ならここは二人に頼もうかのぅ。正直なところ、私も限界での」
「あたしもだ。さすがに疲れたぜ」
ケガレガミと天愚との戦闘で、二人はすでに体力はカツカツ状態。
南に至っては畜霊石を飲んだ反動で、全身筋肉痛。ぐっすり眠って体を休めたい。




