口咽 -ショウメツ- 参
「ど、どうしたんですか!? 急に大声が聞こえましたけど……」
二人の大声を聞いて、和歌が走って広間に入って来た。
その数秒後、同じく太一と祥太郎もやってきたのは言うまでもない。
「あー、いや……わりぃわりぃ。思わず爆笑しちまった」
「私もだ。すまんかったのぅ、大声で叫んでしまって」
南と猫又。二人は目尻に溜まった涙を指先で拭い、一頻り笑い終えて息を整える。
「だが、皆がここに集まったのは丁度良かったの。呼びに行く手間が省けた」
「猫又さん、何かあったんですか? すごく笑ってましたけど……」
「うむ。喜べ、和歌。供助が助かる手立てが見付かったんだの」
「本当ですか!?」
和歌達が寝室に入ってから、ほんの五分足らず。
ついさっきまではお通夜みたいな空気だったのが、今は見る影もない。
『その見付かったって方法、俺も知りたいねぇ』
スマホ越しに話を聞いていた横田も、猫又の言葉に関心を向けずにはいられない。
南はスマホが置かれたテーブルへと向き直して、横田へと答えた。
「横田さん、あたしが仕事で使っている道具……何だったか覚えてます?」
『そりゃあね。なんかこう、色々と使ってるよね。なんて言うか、暗器使いみたいに』
「そうですけど、あたしがその道具を使うのに必要なモンがありますよね?」
『え? 畜霊石でしょ? それが……あっ』
「そうなんです。畜霊石ですよ」
南が言いたい事に気付いた横田に、南はニヤリと笑みを浮かばせて。
スウェットのポケットから取り出すは、小さて丸い透明な石。
『でも、石に供助君の霊力が入っていなきゃ……』
「そこは運が良かったとしか言えないです。古々乃木先輩の霊力がたんまり入った畜霊石が、ここに一つあります」
『なんとまぁご都合展開……それも日ごろの行いのお陰、かな?』
「そう思いたいですね。たまにゃあ行った善行のお返しがあってもバチは当たんないっしょ」
南は横田と話しながら膝で立ち上がり、供助の顔を覗き込む。
しかし、この会話を聞いただけでは、まだよく理解できていない和歌達。
「南さん、ちょっと話が見えないんですけど……」
「あぁ、和歌達には意味わかんねぇよな。悪かった。簡単に言えば、これを古々乃木先輩に飲ます」
「それって……昨日見せてくれた、霊気を溜めれるっていう石、ですよね」
「この中にゃ古々乃木先輩の霊気が大量に入ってる。これを飲ませて体内から放出させりゃあ、毒を一気に消し去れる筈だ」
「それで供助君が助かるんですか?」
「命に関わる外法よりもずっと安全で、確実な方法だ。あたしみてぇに全身筋肉痛になるだろうけどな」
南が手に持っていた透明な石を和歌に見せて、南が説明する。
昨夜、パジャマパーティーをしながら見せてもらったのを和歌は覚えていた。
『南ちゃん、解毒する様子を見たいからテレビ電話に変えてもらえるかい?』
「うっす。和歌、悪ィけど代わりに頼めるか?」
「あ、はい。わかりました」
南が言うと、和歌はテーブルから南のスマホを取り、画面を操作していく。




