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      口咽 -ショウメツ- 弐

「横田が言ってたであろう。この妖毒は被毒者の霊力を喰らう。供助の霊力が存在する限り、毒も消えん。南の霊力を注いでも暖簾に腕押しだの」

「……古々乃木先輩が自分の力だけでどうにかするしかねぇのか」

「一度死んで霊力そのものを無くすか、毒が喰いきれぬ程の強い霊力を放って体内から打ち消すか。今の供助の容態では霊気を放てたとしても、せいぜい蛇口から漏れた水程度。前者しか方法が無いの」


 供助の呼吸は荒く発熱もしていて、すでに体力も削られている。

 酷く衰弱した状態で霊力を放てと言われても、微弱な量しか出せないだろう。

 無理矢理に強力な霊力を放とうとすればそれこそ、霊力も出せず無理をした結果、命を落とす可能性もある。


「いつもの古々乃木先輩だったらこんな毒、簡単に霊気で体内から消してンのにな……」


 最初は視線。次は頭。俯きかけてていた南の姿勢が、ゆっくりと真っ直ぐになって。


「霊気で……体内、から……?」


 自分が言った言葉を、もう一度ゆっくりと口にしながら。

 供助の顔を見た所で、南は目を見開く。


「あーーーーーーーーーーっ!!」


 そして、大声。とにかく大きな声を上げて、猫又の方へと振り向いた。


「なんだの南、急に大声なぞ出しおって」

「あ、ああああ、あた、あああた、ああった……」

「なんだか解らんが落ち着け。呂律が回っておらんの」

「あああ、あった……あったんだよ、猫又サン! あったんだって! あるんだよ! ありやがったぁ!」

「何がだの? 主語を言わんか!」


 南は肩を小刻みに震わせ、驚きと興奮、それと動揺からか。口も上手く回っていない。

 その様子を見て猫又が訝しげにするも、南は一人勝手に話をしていく。


「体内だよ、体内! 体内の毒なんだろ!」

「だから、体内がなんだの!?」

「体内から! 強力な霊気で! ほら! なぁ!?」

「もっと頭の中でまとめてから話せ! 体内から強力な霊気で、それが何だと言う……」


 異様にテンションが上がり、抽象的な言葉しか言わない南。

 その様子に少し煩わしさを覚えながら、猫又が南の言葉を反芻(はんすう)した瞬間。


「あーーーーーーーーーーっ!!」

「あーーーーーーーーーーっ!!」


 猫又も大声を出すと、南もまた合わせるように大声を出し。

 二人はお互い指さしながら素っ頓狂な声を上げた。


「あっはっはっはははははっ! そうか、そうであったか! なぜ思い付かなんだ!」

「そうだよなぁ! そうなんだよ! あははははははっ!」


 さっきまでの緊張感と、張り詰めた空気はどこへ行ったのか。

 二人は抑え切れない笑いを高らかに上げて、ペンション内に響かせた。


『え、なに? どうしたの、ねぇ? いきなり笑い出して怖いんだけど……?』


 まだ通話が繋がっているスマホの向こうに居た横田が、二人の急変にスマホ越しに恐怖を覚える。

 そりゃあ誰だって緊迫した雰囲気の中で、いきなり爆笑しだしたら怖い。


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