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      解毒 -ヒトリミ- 参

『あった……! この書物に該当するデータが見付かった!』

「本当ですか、横田さん!? って言うか速ぇ!?」

『送ってくれた画像とデータ内の画像の照合をしてみたら、すぐに引っ掛かってくれた。けど、これは……』

「横田さん?」


 過去のデータと照合したという事は、毒の成分もすでに解明されている可能性が高い。

 だというのに、次第に横田の声のトーンが下がっていく。


「横田さん、どうしたんです? 横田さん?」

『あ、ああ、すまない。ちょっと……いや、かなり厄介な事になった』


 数秒間、反応が止まった横田の名を南が呼ぶと。

 返って来たのは不安を駆り立てる言葉。


「厄介って……そんなにヤバイ毒なんですか!?」

『いや、毒自体はそう大したものじゃないんだ。ただ、解毒方法が問題でね……』


 声から解る。難色を示しているのが。

 しかし、横田の言葉の矛盾が気になり、猫又が話の間に入る。


「大した事が無い毒なのに、解毒が難しいとは矛盾しているの。その意味は?」

『……』

「横田。なせ言い渋る?」


 なかなか答えない横田に、猫又は微かに表情を顰める。


『正直、私の口から言っていいのか解らない』

「言っていいか解らない、だと……供助の命が危ないのだぞ! そんな事を言っとる場合か!」

『それは解っている、解ってはいるんだ。だが、それは供助君にとって……』

「こうして問答する間も惜しい状況なのだ。理由はどうあれ、今は供助を助けるのが最優先であろう!」

『……確かに、その通りだね』


 ほんの数秒の沈黙。胸中での葛藤の末に腹を括って。

 横田の小さな溜息が電話口から聞こえて来た。


『まず毒の効果だが、重度のインフルエンザにも似た症状が起き、徐々に衰弱させていくものだ。毒が入った傷口が紫色に変色し、毒の回りと一緒に広がっていくのが特徴とされている』

「という事は、今以上に新たな症状が増えたりはしないのだな?」

『そうだ。そして、毒が回り切って死に至るまでの時間は、五時間と書かれている』

「五時間……供助がケガレガミと戦っていたのは今から約一時間半前。あと三時間半か」

『私の部下がそちらに着いても解毒する時間が無い。つまり、自力で解毒をするしか方法は無くなった』

「だが、解毒方法はそっちのデータにあったのだろう?」


 猫又は広間にある壁掛け時計を見やり、タイムリミットを測る。

 現時刻は午前一時半。朝日が昇り始める時間までに、供助を助けなくてはならない。


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