表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
383/457

第九十八話 解毒 -ヒトリミ- 壱

『解毒が出来る部下を手配は出来た。だが、一番近くに居た部下だったが今から最低三時間は掛かる』

「三時間!? ちょっと掛かり過ぎじゃないですかね!?」

『深夜で交通の便が無い上に、南ちゃん達が居る街は大きな市街地から離れた場所だ。どうしても時間が掛かってしまう』

「そんなんじゃあ古々乃木先輩が助からねぇこもしんねぇだろ!? なんとかなんないですか!?」

『なんとかするよ。供助君は大切な部下の忘れ形見だからね』


 口調はいつも通り、あまり抑揚の無い話し方の横田。

 それでも、その奥には揺るがない感情がしっかり含まれていた。


『だから、供助君の症状を詳しく教えてくれ。こちらにある資料と照らし合わせて、対処法を調べる。もしかしたら君達で解毒が可能かもしれない』

「成る程。解毒する者が居なくても、解毒する方法が分かればいい訳だの」

『払い屋ってのは祓うだけの仕事じゃない。今まで積み重ねてきた経験と知識を活用しなきゃね』


 払い屋の組織は全国に有する。それ程の規模を持っている。

 各地方に伝わる文献や、今までの依頼で関わった霊や妖のデータ。それを使わない手はない。


「供助の症状だが、噛まれて毒を入れられた傷が紫色に変色し、少しずつ広がっておる。腫れは無いの」

『傷口が変色、紫色……腫れは無し、と。他には?』

「呼吸が荒く、記憶の混濁が見られた。発熱もしていて、熱は……」


 猫又が電話しながら祥太郎を見ると、意図を察した祥太郎は測り終えた体温計を渡してきた。

 表示された数値を見て、僅かに眉をしかめる猫又。


「三十九度を超えておる」


 風邪やインフルエンザにも似た症状。

 しかし、原因が毒となるとさらなる悪化が予想される。

 解毒とまでは行かずとも、何か症状を緩和させられる方法が欲しい。


『それだけだと該当する毒が多い……絞り込むにはまだ情報が欲しい。毒を持った妖怪の特徴は?』

「基本の形は人型だが、影に似て水のような体質であった。体を色々な物に変えて攻撃してくる特質を持っておった。その一つの蛇に似た触手に、供助が噛まれた」

『名前は分かるかな?』

「ケガレガミと呼ばれておった。昔、村の飢饉を救って貰おうと妖を祀ったという類の、よくあるヤツだの」

『ケガレガミ、か。恐らく真名ではなく俗称だろうね。名前から導き出すのは難しいか……』


 少ない情報から毒の成分を探し出すのは至難の業。

 スピーカー越しに横田がキーボードを打ち込む音が聞こえてくる。

 その時、南がある事を思い出す。


「そうだ、天愚! アイツも毒を使ってやがった!」

『なに、南ちゃん。天愚と戦ったの? 依頼でもないのに?』

「その辺の事情は後で話すんで! で、その毒を塗ってあった武器がありゃあ解るんじゃねぇか!?」

『あるの? その武器とやら』

「いや、ここには無ぇですけど……今から探してくれば!」


 南が対峙した天愚。奴も武具に毒を塗っていたのだ。

 毒の実物があれば、それを元に成分の解明を出来る。


「やめておけ、南。恐らく、ほとんど意味が無いの」

「猫又サン、なんでだよ!?」

「探してくると言っても、場所が場所だ。暗くて目が利きにくい状況で、加えて森の中。見つけ出すのに時間が掛かる」

「どんだけ時間を掛けても見付けてやるってんだよ! 古々乃木先輩の命が掛かってんだ!」

「阿呆、落ち着け。その供助に時間が無いのだ」

「ッ!」

「仮に武器を見付けて来たとしても、それを解析出来る者がおらん」

「それは横田さんが手配した払い屋に……」

「それまで供助が保つか解らぬ、三時間後まで待った上でかの?」

「んぐ……!」


 本末転倒な事を言っていたのを指摘され、南は口を閉じるしかできない。

 猫又が言う通り、実物があっても解析して解毒方法が解らなければ意味が無いのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ