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      正体 -メオト- 伍

「南さんの話が本当なら、もし子供の捜索を優先して神社の結界を弱めていたら……」

「アンタ等が街を散策している間に、天愚に何かされていた可能性があったかもな」


 天愚の目的が新神であったなら、悠一と結花が神社を離れている間に侵入する事も考えられた。

 そして、神社内に何かしらの細工をされていたら、内外から同時に攻められていただろう。

 結果オーライではあるが、二人の用心が功を奏した。


「俺も一つ、聞きたい事がある」

「なんだ、供助」


 供助の言葉に、悠一が反応する。


「俺達が払い屋だってのはなんで解った? 海で太一達に接触して来たのは偶然じゃねぇだろ?」

「ま、新米でも神様だ。見ればその人の霊感の有無や、霊力の強さくらいは解るさ」

「見れば解る、ね。けどよ、お前等は払い屋の俺達と会って見るより先に、太一達に声を掛けた。おかしくねぇか?」

「……供助は頭が悪いと、猫又さんにからかわれてなかったか?」

「頭ぁ悪くても、勘は良くてね」

「そういうのは強みになるよ」


 悠一は困り顔で笑いながら肩を竦めた。けれど、決して悪い意味からの表情ではなく。

 供助の抜け目の無さと言えばいいか。尊敬の意も含めた、半ば呆れにも近かいものだった。


「噂の幽霊ペンション、あそこに住み憑いていた悪霊を祓っただろ?」

「ああ、依頼だったからな。それがこの街に来た目的の半分で、あと半分は旅行だけどな」

「俺達は土地神だからな、街の事なら大体分かる。あのペンションは前々から強い怨念を感じていたが、それが昨日パッタリと消えた。となると……」

「そこに泊ってる奴等の中に払い屋が居ると考えるわな」

「そういう事だ。それにペンションに憑いていた霊はそれなりに強力な怨霊だった。それが一夜にして消えて、しかもそこに宿泊してる肝っ玉ときた」

「本人を見るまでもなく、判断するには十分ってか」

「それに新神を迎える儀式が明日の正午。それまでに神隠しの件を解決したかったけど、何も手掛かり無しでかなり焦っていた。正直なりふり構ってられず、藁にも(すが)る思いだった」


 当時の本心を包み隠さず。悠一は申し訳なさそうに語っていく。


「だから、払い屋の君達に協力してもらおうと思い、太一達と浜辺で接触したんだ」

「ん? お前等は払い屋である俺と猫又、南に用があった筈だ。なのに、なんで先に和歌達と接触した? 回りくどいだろ」

「本当は会うつもりだったんだけど、供助達は朝からこの街に居なかっただろ?」

「そいや朝から急に依頼が入って居なかったな」

「待っても良かったんだが、こっちは少しでも時間が惜しかった。だから先に太一達に接触して、お前達と話がしやすいようにしたんだ」

「なるほどねぇ。太一達を味方に付けときゃ、俺達が話半分で聞き流す事は出来ねぇと踏んだ訳だ」

「その結果、犯人を見付け出すどころか、事件解決までしてもらった。感謝しかないよ」

「はっ、やぶれかぶれで掴んだ頼りない藁に助けられた訳だ」


 神様相手に、皮肉を言う供助。

 泥船ですらないとは、どれだけ頼りなく、どれだけ追い詰められていたのか。

 けど、この皮肉もすべてが解決したから言えた言葉。それを理解して、悠一は笑って受け止めていた。


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