正体 -メオト- 弐
「いいよ、太一。ありがとう」
「悠一……」
「供助が疑うのは当たり前だし、それだけお前達を大切に思ってるって事だ」
悠一は観念したように、ふぅと息を吐く。
「こちらもヘトヘトでもう余力がない。それにあの力。敵ではない……と、思いたい所だがの」
和歌に体を支えられ、何とか立ち上がる猫又。
とうに限界だとしても、今から事が起きるのならば。その時は無理をしてでも戦うと、目が語る。
供助と猫又の反応を見て、敵意を向けられていると言うのに、悠一と結花はどこか嬉しそうだった。
「悠一、もう……」
「ああ。最後まで隠すつもりだったが、無理そうだ。それに力も使って見せてしまった」
結花が名を呼ぶと、言いたい事を察知して。
悠一は自分の右手を見やり、その手にはあの力……神力が纏われる。
同時に、供助の拳にも霊力が込められると。
「何より恩人に敬意を払いたい。もう一人が来たら話そう」
そう言って悠一が森がある方向を見ると、その先で茂みがガサガサと鳴った。
「お、ケガレガミがいねぇ」
茂みから現れたのは南だった。
天愚を倒し、武器の回収をし終えて戻ってきたのだ。
しかし、姿はボロボロ。あちこちに擦り傷があり、スカジャンは所々にほつれと切れ目。
なのに口元だけは妙に綺麗だった。不思議だね。
「南さん!」
「おう、祥太郎。やっぱお前等こっちに居たか」
「歩き方が変ですけど、大丈夫ですか!? 怪我とか!?」
「あいっででっ! だ、大丈夫だから触んな触んな! 色々あって全身筋肉痛なだけだっ!」
「あっ、ご、ごめんなさい!」
祥太郎が心配して駆け寄り、体を支えようとするも。
南は現在、畜霊石の反動で全身が筋肉痛でバッキバキ。感度二倍である。
「で、なんかあったんスか?」
なんとか供助達の所まで移動し、さすがに普通じゃない空気に何かを察する南。
供助達と対峙するように立つ、悠一と結花を見る。
「全員揃ったし、正直に話すよ。まずは猫又さんの質問に答える。俺達は敵じゃない」
両手を軽く上げ、敵意も殺意も無いと。悠一は微笑んで話す。
「けど味方でもない、ってか?」
「しっかり怪しんでくれるな、供助」
「悪ィな。仕事柄、得体の知れねぇのが敵なもんでね」
供助は肩を竦めて自嘲染みた笑みを見せ、それでも未だ警戒を解かず。
今もなお、利き手の霊力が途絶える様子は無い。
「回りくどい言い方も時間が掛かる。単刀直入に話そう。猫又さんは大体の予想は付いてるでしょう?」
「まぁの」
「俺と結花は……まぁ、神様ってヤツだ」
はは、と。悠一は笑う。
「えぇ!?」
「か、神様ぁ!?」
「悠一君と結花さんが!?」
まさかの正体に、聞いて驚く三人。
和歌は口を押え、太一は指を差し、祥太郎は眼鏡を整え直して。
「神様って……え、マジ? 古々乃木先輩も気付いてたんスか?」
「まぁ、な。あの二人が太一達を守ってくれてよ。そん時に使った力が神力だったからな」
「ほぇー、マジモンの神様かよ」
供助の反応と、その理由に疑いは無く。
南も正直に驚いていた。




