表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
360/457

      五人 -コドモタチ- 参

「その炎が奴の触手を防いでくれるの。私は子供たちを助けに行く。すまんが、少しだけここを離れる」


 残り少ない妖力を割いて使用した火廻。

 猫又の手足に入る力は弱くなり、疲労がさらに増す。

 それでも動かなくては。誰一人として死なせる訳にはいかないのだから。


「ぬんッ!」


 猫又は体に鞭を打ち、脚に妖気を纏って一足飛びをする。

 ケガレガミよりも猫又の方が遥かにスピードがある。が、奴も邪魔な猫又に対して何もしない筈がない。

 猫又の動きに気付いたケガレガミは、体の一部を伸ばすその先端は。斧の様な形状で切先を振るう。


「妖力も少なく、お互い大技は出せんか」

「ジャジャ、マ、マァァァァァア!!」


 車で言うなら給油ランプが点滅している状態。

 ケガレガミの繰り出してきた触手の劣化具合に、自嘲も含めた小さな笑い。


「だが、小技を上手く使えるのも良い女の条件だの」


 ケガレガミの攻撃は苦し紛れにも近い。技術ではなく物量で押すタイプだったのが、一本の触手のみ。

 この何十倍の数に抵抗していた猫又は容易く回避し、ケガレガミを追い越し際に――。


「こんな風にの」


 右手に纏わせていた炎を、ケガレガミの顔面に振りかけた。


「イイィィギギィィィィ!?」


 火力も低く、他の部位に燃え移りもしない。

 しかし、燃やされた顔だけには酷くしつこい燃え方をする。

 ケガレガミが頭部を振っても、腕を作って払っても、なかなかに消えない。


「これで幾ばくか時間は稼げようて」


 消費妖力は抑えて、且つ効果的に。

 今の灯火は火力を抑えた分、燃焼が長くなるように調整したもの。

 これでケガレガミの視界を遮断して、今の内に洞窟へと一気に向かう。


「奴の寝床とも相まって、空気が悪いの……」


 洞窟というだけで通気性が悪いが、ケガレガミの毒気も合わさって、空気が淀んだ感覚がする。

 猫又は手で鼻を抑えながら、奥へと急いでいく。


「おった……!」


 最奥で横たわる子供が数人。気絶していて顔色も良くないが、息はしている。

 天愚はあとで子供達をケガレガミに食わせると言っていた。ならば、死なない程度には気にかけていた筈だ。

 生存確認は出来た。だが、安全とは言えない。ケガレガミが追ってくる前に子供達を連れて出なければ。


「ひい、ふう、みい、よ……うむ、四人おるの」


 会った時に聞いた話では、三人の子供が行方不明になっていると言っていた。

 そして、祭りの最中に攫われた一人。計四人。全員揃っている事に安心する。

 二人ずつ片腕で担ぐも、普段ならば余裕でも今は辛く。それでも猫又は奥歯を噛んで根性を見せる。


「ふん、ぬっ!」


 猫又は再度足へと妖気を込め、出口へと急ぐ。

 子供を抱えている以上、本来のスピードは出せず気を遣わねばならない。

 出口はもうすぐ。ケガレガミの姿もまだ見えない。これなら間に合う。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ