五人 -コドモタチ- 弐
「しまったッ! 奴の狙いは子供達だのっ!」
失念していたと自責が胸を駆る。ここに居る人間は太一達だけじゃなかった。
ここには……掘り起こされた祠があった小さな洞窟に、天愚が攫った子供達がいる。
「子供って……神隠しになった子供達!? どこにいるの!?」
猫又の子供と言う言葉に。激しく食いつく結花。
当然だ。攫われた子供の中には姉の子供がいるのだから。
「恐らく、あそこにある洞窟内だの」
「なら助けに……」
「動くでないっ! 行けば奴と鉢合わせる!」
「でも!」
「でもではない!」
猫又が制止させるも、結花は今にも飛び出しそう。
このままケガレガミを放っていたら、子供が危ないのは猫又も理解している。
だが、懸念すべき事は他にもある。それによっては今以上に状況が悪くなるだろう。
最悪、太一達が死ぬ可能性も出てくる。
「猫又さん!」
「くっ……!」
後ろから急かしてくる結花。洞窟へ向かっていくケガレガミ。
策を考えている時間がない。供助が居れば手はあったが、居ない者を当てに出来ない。
ならば猫又は、信じる。己の人を見る目を。
「結花、悠一。聞きたい事があるの」
「聞きたい事? それよりも先に……」
「大事な事だの!」
結花の言葉を遮り、大声を上げる猫又。
「二人がケガレガミを見た時、奴に驚いていた……だが、私の耳と尻尾には反応がなかった。まるで元から知っていたかのように、の」
「あっ……!」
「ッ!」
結花は口に指を当て、悠一は顔を顰めて。しかし、二人の反応は揃って同じ。
失念していた、と言いたげな。
「詳しく聞く気はない。だが……」
しかし、猫又は一蹴する。未だ襲ってくる触手の相手をしながら、力弱くなっていく声で。
二人の正体よりも、優先なのは命。子供達。
「お前達は……何者だの?」
触手の攻撃が緩んだ間に、後ろへと視線を向けて。
結花と悠一。二人の意思。その本心を問う。
「それ、は……」
「……」
結花は口ごもり、悠一はだんまり。
この反応で二人には何かあるという事は確定した。
だが、本当に聞きたいのはここから。
「すまん、もっと簡単に聞く」
時間が無いのに回りくどい聞き方をしてしまったと。
猫又は自嘲を含めて聞き直す。
「二人は敵かの?」
「敵じゃないわ!」
「それは違う!」
この質問には、言い淀んでいた二人がすぐさま返した。
「くっく、即答とはの」
もし敵だったなら、どれだけ白々しいか。
しかし、猫又が感じるは清々しさ。二人の目は嘘を言ってるようには見えない。
猫又は縲針の構えを解き、深く呼吸しながら立ち上がる。
「妖気の残りは少ない。賭け、だの」
険しい顔をさせて呟く猫又。
自分に残された選択肢は僅か。その中から最善の策を選ぶしかない。
猫又は決意をし、人差し指に小さな火球を作り出す。
「お前達、私の後ろでもっと近付いて固まるんだの」
悠一達は言う事を黙って従い、猫又の背後に固まって集まる。
結花は何かを言いたそうであったが、物々しい雰囲気に聞き入れるしかなかった。
「そのまま動くでないの」
言って、猫又が人差し指から火球を足元に落とすと。
ボッ――――!
「きゃっ!?」
「うわっ!」
悠一達を囲むように、地面から炎が飛び出した。一定範囲を炎で囲って敵を封じる技、火廻。
だが、逆に言えば外からの干渉も防ぐ事が出来る。




