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      霊石 -オクノテ- 陸

「ク、ソ……お前らの一人でも食えて、れば……」

「答えろ」

「……金色の、尾をした……狐……」

「金色の狐……?」


 天愚の言葉を反芻して、南はハッとする。


「おい、そいつとどこで会った?」

「この……地……フラッ、と……現れ……」


 徐々に増えていく白煙。

 天愚が消える前に、少しでも情報を聞き出そうと。南は焦る気持ちを抑えて話に耳を傾ける。

 天愚もすでに意識は朦朧としていて、南の問い抵抗無く、ほぼ無意識で反射的に答えているのだろう。


「今、の……倍の力、を、付けた……なら……レン……モン、サワ、に……来い……」

「れんもんさわ? どこかの地名か?」

「さすれば神、を、見返す……力、を……方法を、教えると……」


 天愚の頭部はすでに半分が消え、あと僅かで完全に消え失せる。

 聞きたい事はまだいくつかあるが、次の質問が最後になろう。


「最後だ。そいつは毛髪も金色だったか?」

「あぁ……髪も、尾も……綺麗な、金だった……。鈴の音を……鳴ら……し……て……」


 この言葉を最後に。天愚は影も残らず塵と化して散っていった。

 上半身と下半身も、元から無かったかのように綺麗に。


「どう考えても猫又サンの探してる奴……だよな」


 まさかこんなに早く情報が手に入るとは思っていなかった。

 やっぱり悪運は強ぇな、と。南は心で呟く。


「んぎっ!」


 歩き出した所で、南の背中がビキリと痛みが走る。


「っかー、もう反動が出てきやがった」


 南は痛みから眉間に皺を寄せ、気付けば背中だけじゃなく腕に脚。全身が筋肉痛になっていた。

 これが畜霊石を飲み込んで使用した対価。一時的に強力な霊力を使える代わりに、反動で数倍の負担が一気に返ってくるのだ。

 そして、南はその場にしゃがみ込み、大きなため息。


「はぁぁぁぁ……筋肉痛はまぁ良いンだけどよ」


 人差し指と中指。二本だけを立てた右手を見て、憂鬱な表情をする南。

 いきなりだが、畜霊石はそれなりの希少品であり、宝石までとはいかないがそこそこいい値段がする。

 南が武器に使用している大きさので五万円前後。その年、その時期の発掘量である程度は前後するが、大体それくらいだ。

 五万円。一つ五万円。購入するのに経費で落ちるっちゃ落ちるが、高価な物だ。そう何度も買ってもらう事が出来ない。

 なので、あちこちに落ちてる今回使った武器は回収しなきゃならない。もちろん釘も。

 そう、回収しなきゃならないのである。全部。


「戦闘で夕飯を全部吐き出してたのが幸いかぁ」


 やっぱり悪運が強い。あんまり嬉しくないが。

 観念して南は右手の立てた指を、思いっきり喉に入れるのであった。


「おうぇぇぇぇえぇ、っえぇぇ」


 当然、飲み込んだ蓄霊石も例外じゃない。

 胃の中に入った畜霊石を、吐き出して回収しなきゃいけないのだ。だってまた使うから。

 他にもう一つ別の回収方法があるが、それは後日トイレで鼻を摘まんで回収しなきゃいけなくなる。

 だったらもう消去法で前者を選ばざるを得ないのである。


「うおぇ、おぇぇぇえええぇぇ……」


 供助に見られないで良かった。そう思いながら回収作業をする南の後姿は。 

 勝者の貫禄の欠片もない、なんだか哀愁が漂う背中だった。


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