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      霊石 -オクノテ- 伍

「死ねぇぇぇああぁぁぁあっ!」


 警棒を持つ手が片手になり、力が半減した所を狙い。

 天愚は犬歯を剥き出して、南の細首に食らいつく。


「――――ぁ」


 よりも一瞬。ほんの一瞬だけ。

 天愚の首が斬り飛ばされるのが先だった。


「な、ぜ」


 ごろん。天愚の頭部が、草むらの上に転がる。

 そして、天愚が見たそれは。


「まだ、隠し持って……」

「いんや、持ってなかったさ。あたしは」


 畜霊石の輝きを取り戻した、サバイバルナイフを持った南の姿だった。


「事故って意識不明になっても生きてたし……悪運が強ぇなぁ、あたし」


 偶然に偶然が重なった結果。簡単に言ってしまえば、南は運が良かった。

 南が奇襲でサバイバルナイフを使った事。それを天愚が防ぎ、投げ捨てた事。そして、供助が乱入してきた事。

 これらが重なり、偶然にもだ。今の結果を生み出したのだった。


「結局……結局は、だ。あたしは仲間に助けられちまった」


 サバイバルナイフの柄尻に嵌められた畜霊石の輝きを眺め、鼻を鳴らして弱々しく微笑む南。


「そうか……あの小僧、か」


 合点がいったと、天愚は忌々しいと目を細める。

 そう、天愚の言う通り。サバイバルナイフの畜霊石に霊力を補充したのは供助だった。


『南……手、貸すか?』


 南に問い掛けたこの時すでに。供助は足元に落ちていたサバイバルナイフに霊力を注ぎ終えていた。

 それも一瞬、僅かな時間で。南ならば二十分は掛かるであろう補充を、数秒で終わらせた。大量の霊力を持つ供助だから可能な芸当。

 天愚が捨てたナイフが供助の落下地点にあり、それを供助が立ち上がる途中に霊力を蓄積させ、そして今、南が天愚に襲われたのが同じ場所であった。

 傍から見ればただの偶然。しかし、供助だからこそ出来て、南だからこそ切り開けた、なるべくしてなった結果だと言えよう。


「今度こそ終わりだな、オッサン」


 首を斬り離された上半身はピクリともせず、首だけの天愚はもう消滅するの待つしかない。

 南は鷲掴みされていた肩を摩りながら立ち上がり、天愚の首へと歩み寄る。

 天愚が完全に消え失せる前に、聞き出さなければならない事がある。


「おい、ケガレガミの話を流してきた“奴”ってのは、どんな奴だ?」


 天愚を見下ろし、南は問う。

 情報を流して天愚を唆し、発端を起こした元凶が誰なのかを。


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