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第九十二話 消耗 -フンバリドコロ- 壱

「奴……?」


 太一達が心配な気持ちはある。懸念もある。

 しかし、だからと言って居場所が分らない太一達を助ける方法は南は持っていない。

 ならば優先すべきは――。


「あぁそうだ。気になってたんだよ。人を喰えば強くなるってぇ話、それをどこの誰から聞いたかってのを。奴ってのは、そいつか?」

「んん、んー? くく、いいだろう。そうだ、そいつから聞いた。ケガレガミの存在も、今なら弱っていて利用できるって事もな」


 可能な限りの、情報の収集。

 供助に頼まれていた件もある。南は体力回復と作戦を考える時間稼ぎを狙う。


「そして今、この街では新しい神を迎える祭りが行われている」

「そうか、新神か。だからケガレガミを……」

「ああ、そうさ。この地の新しい神としてケガレガミを降ろし、俺が支配しようと考えていたというのに……!」

「あたし等に計画が見事にブッ壊されたってか。ざまぁねぇな。ケガレガミを制御していた数珠もその為だったって訳だ」

「本来の力を持っていたなら、俺ではケガレガミを服従させる事は不可能だった……が、封印を解いて弱っていた所を狙って数珠を付けた。俺が扱える程度まで力を落としてな」

「要はテメェが雑魚だったってこったろ? 今さらかよ」

「解らないか? つまり拘束が解かれた今、ケガレガミは――――」

「ッ!」


 ズズ――――ン。

 突如、多くから聞こえてくる地鳴り。


「お前が対峙していた時よりも、数倍強い」


 小さく地面が揺れ、木々がざわめく。

 天愚の相手に精一杯で、今さら感じ取った膨大な妖気。

 供助と猫又に任せたケガレガミの妖力が、何倍にも増強されていた。


「数珠が破壊された以上、もうケガレガミを止める術は無い。計画は破綻したが、忌々しい払い屋共を殺せればそれでいい!」

「手間ぁ掛けた割には随分と簡単に手放すじゃねぇか」

「どの道、この街は枷の外れたケガレガミによって侵される。そんな厄疫に(まみ)れた街なぞ要らん」


 舌打ちし、静かに憤慨の表情を見せる天愚。


「いや、街が無事に済む方法はあるか。俺が彷徨いの結界を解かなければケガレガミはここから出る事は出来ん」


 くっく、と。言葉に混ざる笑い声。

 街の住民を巻き込まない方法は我が手中にある、気分次第だと。


「まぁ、それは関係ないか。どちらにしろお前等はここで死ぬ」

「あぁ? 逆だ、逆」

「何?」

「時間稼ぎのつもりだったが……さっきからウダウダくっちゃべって、年寄りは話が長くて嫌ンなる。街だの神だのとよぉ……」


 ゆっくり立ち上がり、額に付いた泥をスカジャンの袖で拭う南。


「死ぬのはそっちだ。お前等はここで祓われンだからよ」


 天愚は自分が、ケガレガミは供助と猫又が祓う。

 元凶が居なくなれば関係ない。明日になれば街にはいつも通りの、昨日通りの今日が来る。


「くっかっかっか、最後まで威勢だけはいい」

「最後だぁ? あたしはまだ……」

「だが、そろそろ五月蠅いな」


 ひたり。冷たい感触が、南の顔を覆う。

 突如視界に現れた天愚の右手。


「黙れ」

「か……っ!」


 そのまま地面に。南の後頭部は激しく打ち付けられた。

 脳が揺さぶられ、視界が歪み、酷い耳鳴り。

 背中も強く叩きつけられ、肺の酸素がすべて外に追い出される。


「ん、ぎ……ぅああ!」

「おっと」


 痛みに耐えるよりも、息苦しさに悶えるよりも先に。

 南が真っ先に取った行動は、サバイバルナイフによる頭部を狙った一刺し。

 だが、天愚には届かず。掠りもしないで空振った。


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