表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
344/457

      煽合 -タイマン- 弐

「やっぱ力じゃ分が悪ィ……が、なーんか腑に落ちねぇなぁ」


 腕の痺れを払うように軽く手を振らせ、南は一人ごちる。

 南のように蹴りをしたり、左手で攻撃も出来たはず。なのに天愚は、右手に左手を添えて鈎爪の攻撃一点にのみ力を集中させていた。

 そこまで鈎爪に固執する理由。他のリソースを割いてでも集中する訳。


「……毒か?」


 ぽつり。口から呟かれる可能性。

 鈎爪自体の殺傷能力は高くない。急所に当たっても即死するのは稀。

 だが、“当てれば死ぬ”ようにする事は可能だ。方法は簡単、切先に毒を塗ればいい。

 そうすれば小さなひっかき傷でも時間経過で衰弱し、おっ()ぬ。


「フン、気付いたか」

「古典的な使い方するじゃねぇか。雑魚が良く使う手だ」

「毒に気付いただけで調子に乗るか。若さ故に愚劣だな」

「調子に乗る? 違ぇよ、こりゃ分析だ。だってお前、つまりは“毒に頼らなければ負けちゃいます”って宣言してるようなモンだろ?」

「貴様ぁぁぁぁぁぁ!」


 力勝負では負けても、挑発勝負では口が回る南に軍配が上がる。

 そして、頭の回転も。


「そらよ!」

「そんなものではなぁ!」


 釘の投擲。三本の釘が天愚の目を狙うも。

 すでに一度見せた武器。予想の範疇(はんちゅう)だと鈎爪の甲で簡単に弾かれる。


「毒に気付くのは流石と言えるが、それにばかり意識し過ぎだな!」

「意識し過ぎてんのはそっちだろ。ガラ空きで助かるわ」


 バヂンッ!

 南から見せる不敵な笑み。天愚の左手に走る痛み。

 突然の衝撃に、天愚の左腕は大きく上に弾けた。


「ハナっから狙ってんのはこっちなんだよ!」


 南の左手から伸びるヨーヨー。衝撃と痛覚の正体に気付いても遅い。

 大事に大事に握っていた数珠は、意識外からの攻撃によって左手から手放されて。

 緩い弧を描いて南の頭上に飛んでいく。


「貴、様……! やめろぉぉぉぉぉ!」

「やだね」


 ――――キン。

 サバイバルナイフで振り上げ一閃。

 繋ぎ止める糸が切られた数珠の玉は、ばらばらと四散する。


「あ、ぁ……数珠……せっかく貰ったというのに……」


 辺りに散らばった数珠を見る顔は情けない事。

 これでケガレガミは天愚の支配下から解放されたはず。合流して共闘される懸念も無くなった。

 あとは供助と猫又の奮闘を祈るだけ。天愚は自分が倒すと言った以上、情けない戦いは出来ない。


『グオォォォォォォッ!!』


 森林全体にも響く絶叫。その振動に枝葉が小さく揺れる。

 聞こえてきたのは工事現場の方角からだった。


「今の……ケガレガミの声、か?」

「ああ、ああぁ……俺の計画が……」


 ここからが本勝負。踏ん張りどころ。

 南はサバイバルナイフを構え直し、大きく息を吐く。


「さぁ、お互い独り身になったんだ。タイマンといこうや」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ