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     穢神 後 -ケガレガミ コウ- 弐

「不巫怨口女を祓い屋が祓った時、消えた体から竹櫛が残って出てきたのを覚えておるか?」

「……ああ、七篠が証拠だとか言って回収してたな」

「奴は元は神様だと祀られていた。そういう類の神霊には大体、依り代となる核が存在する」

「その核を壊せば、水見てぇな体だろうが再生しようが関係無ぇ、か」

「が、それも難しい。お勧めではないの」

「は?」

「恐らく奴の性質上、体内にある核を自由に移動させる事が出来ると考えるべきだの」

「てぇ事はあれか? 大量に出して伸び縮みする触手の先にも……」

「そうなるの。加えて地中へ逃げる手も持っている」

「お前、方法が二つあるっつって二つ共使えないんじゃ意味ねぇだろうが」

「だが、方法はその二つしかない」

「体力のチキンレースか、一発大穴宝くじか……言っとくが、俺ぁ運には自信ねぇぞ」

「知っておる。ちなみに私も運には自信がない」

「はっ、そりゃそうだ。運が良かったら払い屋なんて仕事してねぇか」


 自虐を含めて軽く笑う供助。

 運良く普通の生活、普通の常識内で生きていたのなら、こんな仕事の存在すら知らなかったろう。


「にしても、さっきから妙に大人しくねぇか?」

「触手を戻したと思えば、蹲って動かんのぅ」


 ウニ攻撃を回避して警戒しながら動きを伺っていたが、さっきから様子が変だ。

 天愚の所へ向かおうとするでもなく、供助達を攻撃するでもない。

 ただその場で静かに、佇むだけ。


「……いや、待て。なにかおかしいの」

「何か震えてねぇか? アイツ」


 小刻みに震えていたのが、今では遠目でも解るくらいに体を蠢かせている。

 攻撃を仕掛けてくるようにも見えず、明らかに様子がおかしい。


「グオォォォォォォッ!!」

「ッ!?」

「むっ!?」


 咆哮。頭部を仰がせて叫びをあげるケガレガミ。

 供助と猫又が身構えたその時。ケガレガミの首にあった数珠が、音を立てて飛散した。


「なんだ、数珠が壊れた?」

「供助は破壊する前に防がれておったし、経年劣化にしては不自然だの。という事は……」

「南か!」


 天愚が持つ、対となるもう一個。そちらがなんらかの方法で破壊され、対である一方もケガレガミの力を抑えきれなくなって壊れたのだろう。

 これで天愚の支配下から解放され、奴等が協力し合う事はもう無い。

 南も向こうで頑張ってる。なら負けてられないと、二人はケガレガミへと構えると。


「……なぁ、猫又」

「なんだの、供助」

「気のせいか、奴の妖気が強くなってねぇか?」

「気のせいでなく、奴の妖気が強くなってるの」

「嫌な予感すんだけどよ」

「嫌な予感しかせんの」


 ケガレガミの震えが治まっていくにつれて、その妖気は急速に増していく。

 形は人影のようなまま。変化が無いのが逆に不穏さを強くさせる。


「グウウゥゥゥ……」

「来るの!」

「見りゃわかる!」


 さっきまでの触手から一変。まばらに垂れ流していた妖気が一転。

 跳ね上がった危機を供助と猫又は肌で感じる。胸から背中に突き抜け、首筋にぞわりと走る寒気。

 経験から解る。体が警告している。今、対峙しているソレは、さっきまでのソレは別格だと。


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