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第九十話 穢神 後 -ケガレガミ コウ- 壱

「グゥゥゥゥオオォ……」

「っと、悪いが行かせねぇ。あっちで後輩が頑張ってんだ」


 唸り声を上げながら森林への向くケガレガミを、供助と猫又がその進行方向を遮る。


「猫又、好きにやれ。俺も好きにやる」

「おっけーだの」


 指を鳴らす供助に、猫又は軽く返す。

 刹那、二人が同時に走り出す。


「ほーう、れっ!」


 先に仕掛けるは猫又。

 ケガレガミを追い抜き際に、己の高い素早さの勢いを乗せた切り裂き。

 その鋭い爪から繰り出される攻撃は、ケガレガミの体を簡単に引き裂く。


「グゥウウ!」

「肉体が在るようで無い……水みたいで手応えがイマイチだのぅ」


 振り返りながら結果を確認するも、やはり決定打には程遠い。

 胴体の三分の二を切断したのに、もうすでに繋がりかけている。


「せっ!」


 そこへ間髪入れず。供助の追撃がケガレガミの頭部を貫く。

 パァン! 良い音が鳴り響き、殴られた顔面は飛び散るも……。


「ま、そうだわな」


 水面に拳を叩きつけたような感触。つまり手応えなし。

 しかし、狙いは攻撃によるダメージを与える事ではない。


「これか」


 先ほど猫又が言っていた、ケガレガミの首に掛けられているという数珠。

 一瞬だけ一部が露わになったが、すぐさまケガレガミの体に覆われて隠される。

 が、だから何だと。供助は攻撃した右手ででそのまま、手探りで無理矢理に掴んだ。


「これをひっぺがしゃ……」

「グゥゥゥゥゥウッ!!」

「ちっ!」


 しかし、供助が引っ張ろうと押した瞬間に、それを拒絶するケガレガミ。

 沸騰するようにボコボコとケガレガミの体が蠢くのを見た供助は、直後に起こる事を予想して咄嗟に後退する。

 やはり予想通り、次にケガレガミが起こした行動は無数の触手による串刺しであった。


「分かっちゃいても厄介だな、こういうのはよ……っ!」


 弾ける黒い身体。伸びる鋭利な触手。全方位に向けて放たれる無差別攻撃。

 近くに天愚はいないのだ。ケガレガミはもう周りを気にする必要も、いちいち的を識別する必要も無い。

 だが、こんな攻撃に当たる供助でもない。首元の数珠を取られない為に離れさせる、という目的であれば効果は十分であった。

 難なく回避した猫又も、供助の横で愚痴を零す。


「単純ではあるが邪魔な事この上ないのぅ」

「天愚の数珠を外しゃあ、なんぼか楽になるかと思ったが……」

「そのまま倒してしまった方が楽そうだの」

「水みてぇな体で攻撃しても飛び散るだけ。方法はあんのか?」

「方法は二つあるの」


 供助の問いに、猫又は間も明けずに答えた。


「一つは再生が追い付かない程の高火力をぶつける」

「不巫怨口女の時みてぇにか。よし、ならお前の篝火で……」

「だが、高火力の篝火を使っても奴は地中に穴を掘って逃げられると思った方が良いの。引火した部分を切り離して本体は地中に、という手も可能だからの」

「んじゃ二つ目は?」

「奴の核を直接破壊する」

「核?」


 聞き慣れていない言葉に、供助は聞き返す。

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