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      穢神 前 -ケガレガミ ゼン- 伍

「さて、どう割り振るかの」

「猫又サン、古々乃木先輩とでケガレガミの方は任せていいか? 長っ鼻はあたしが倒すからよ」

「一人でか?」

「霊力の量が少ねぇあたしはケガレガミと相性が悪ィ。任せる以上、天愚ぐらいは一人でやってやるさ」


 自分の弱点は理解している。だからこそ、苦手なものは苦手だと認めて対策を打つ。

 ケガレガミの手数と物量で攻められたら南には打つ手がない。供助か猫又と組んでも足を引っ張る可能性も少なくない。

 ならば、供助と猫又にケガレガミを任せて、リーチの短い天愚とのタイマンの方が効率も相性も断然良い。


「小娘が一人で俺の相手をだと……? たかだか傷を付けただけで調子に乗るなよ!?」


 薬草を塗り終わり、千切った布で傷口を強く縛る天愚。

 傷を負ったがそれだけ。倒されるのは貴様等だと目で語る。


「いやぁホント、アンタが鈍感で助かるぜ」


 不意に、そして不敵に。南は微笑みを見せてそう言った。

 供助のような霊力は無い。猫又のような多彩な技も火力も無い。

 だが、自分には器用さがある。


「紐……!? いつの間に!?」


 言われて気付くも時すでに遅し。

 天愚の左足首には南が使う紐分銅が巻き付いていた。

 先ほど上空へ天愚に逃げられた際、右手に持っていた紐分銅を瞬時に投げつけて引っ掛けていたのだ。


「喜べよ、オッサン。あたしと二人っきりでデートだ」

「嘗めるな! 手負いでも小娘に力負けするほど老いぼれておらん!」

「おっと、あたしゃ非力な女の子だぜ? エスコートは男がするもんだ」


 力む天愚に対して、南の態度は軽い事。

 さらには、何も持たない両手をひらひらと遊ばせている。

 南が使った紐分銅はケガレガミの黒壁を分断した時の物。つまり、だ。


「いってらっしゃい、お嬢さん。ってか?」

「ッ! ケガレガミ、俺を――――」

「おぅらっ!」


 紐分銅のもう片端を持っているのは当然、供助。

 この場に居る全員の中で一番の瞬発力を持つ。その人間の力に対抗できる者は居ない。

 怪我の治療の為に体から触手を解き、追い打ちを警戒してケガレガミを丘下に配置したのが仇となった。


「ぬ、お……っ!」


 天愚は抵抗する暇も無く、一瞬にして空中へと投げ出される。

 そして、供助の力に抗えぬまま。真向かいに広がる森林へとぶっ飛んでいった。


「やっぱ良い男はエスコートも上手ッスねぇ」

「上手も何もただの力技だろ」

「あたしは押しに弱いんスよ。あれくらいが好みッス」

「南。あの鼻野郎……人を喰えば強くなれるって事を誰かから聞いた口ぶりだった。余裕があればでいい。聞き出しといてくれるか?」

「へっ、余裕しか無いッスよ! 古々乃木先輩!」


 何かある。何か引っかかる。そう供助の勘が言っている。

 供助の頼みを快諾し、南は天愚を追って森林へと走っていく。

 正直に言えば、南と天愚。どちらが強いかと聞かれたら、天愚に分配が上がるだろう。

 それは南本人も気付いていて、供助達もそれを踏まえて一人で任せた。それでも南が勝つと読んだからだ。


「んじゃ、こっちも第二ラウンドと行くか」

「何を言っておる。第二ではなく最終ラウンドであろう?」


 供助は軍手を付け直し、猫又は深呼吸を一つ。

 ならば、こっちも情けない姿を見せてられないと。二人は兜の緒を締め直す。


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