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      穢神 前 -ケガレガミ ゼン- 肆

「クッソ!」

「ぬっ!?」


 両腕で顔と首、心臓を隠して、咄嗟に後方へと飛んで退いた南。

 天愚を逃がすまいと構えていた猫又も、その攻撃に回避行動を取らずにはいられなかった。

 南は供助と比べて霊力の総量が少ない。つまり攻撃を防ぐ為に纏う霊力にも限度がある。

 致命傷だけは避けるよう最低限の防御を取って、ゴロゴロと地面に転がって着地した。


「大丈夫か、南?」

「運良く躱せて問題無いッス! けどスンマセン、仕留め損ねました」

「気にすんな……っと、おわっ!?」


 天愚はそのまま掘削途中の丘の上に移動し、ウニの針を引っ込めるケガレガミ。

 せめてケガレガミを天愚に近付けさせないようにと、供助が掴んでいた触手を引っ張ろうとしたその時。

 手で握っていた部分の手前でぶちんと触手が切れ、勢い余って供助は尻餠を突く。


「ちっ、トカゲの尻尾切りか」

「あたしが釘刺してたのも同じッスね」


 南が地面に釘を刺して引っ掛けていた触手も、同様に先っぽを切って触手を回収されていた。

 せっかく散らしていた触手も元通り。供助は面倒だと舌打ちする。

 さらにケガレガミは天愚に巻き付いていた体を離し、うねうねと地面に潜って行ったと思えば。

 天愚が居る丘の真下へと、ケガレガミは影のような体を細くさせ、地中を掘って移動し始めた。


「供助、南。ちといいかの?」


 一足飛びで供助達の元へ合流する猫又。

 天愚への追い打ちを仕掛けようと狙っていたが、さっきのウニ攻撃で邪魔されて機会を見逃してしまった。

 代わりにケガレガミへ手を出そうとしたが、気になる点が一つ。その事の情報共有が優先だと考えた。


「先程ちらりとな、ケガレガミの首元にある物が見えた」

「勿体ぶってねぇで早く言え」

「恐らくあれは、天愚が持っていた数珠と同じ物……いや、『(つい)』なる物ではないかと思われるの」

「対? どういうこった?」

「うむ。天愚とケガレガミは協力関係では無く、手に持つ数珠で操っていると考えるべきだの」


 ケガレガミは今だ移動中。天愚は負った傷への処置。しかし警戒は怠らず。視線も逸らさず。

 猫又は己が至った推論を述べていく。


「そういや確かに……あのオッサン、ケガレガミに指示をする時は必ず数珠を擦り合わせてたッスよね。古々乃木先輩」

「そんで戦ってみて分かったのは、厄介なのは天愚よりもケガレガミ。ってぇ事は、だ」

「うむ。あの二人を引き離せば相手するのが楽になる訳だの」


 方針は決まった。三人は高みから見下ろしてくる敵へと鋭い視線をぶつける。


「ぐ……っ、く……おのれ……っ!」


 苦虫を噛み潰したような顔の天愚。傷口へ自前の薬草を塗りたくって止血するも、決して浅くない傷に脂汗を浮かばせる。

 高みに立つ天愚は険しい表情。対して見上げる供助達の目には戦意が満ち満ちている。

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