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      結界 -メグラレ- 参

「じゃ悠一、戻る奴等の案内は頼んだ」


 悠一の肩にポン、と手を置く南。


「そんな顔されちゃあ気が引ける。お前の代わりに、大人のあたしと猫又サンで見てきてやるよ」

「南、さん?」

「なんかあったらすぐ教えっから。帰りも和歌か祥太郎にでも道を覚えてもらって電話でナビしてもらえりゃいい」

「だったら俺も残って、結花が太一達と戻れば……」

「自分の彼女と一緒に居てやらねぇでどうすんだ。奇怪な事が起きてる夜の街じゃ特によ」


 守ってやるのがお前の役目だろ、と。

 南は悠一の背中を軽く叩いた。


「でもま、あたし達も女二人ってぇのも心細い。って訳でぇ……」

「あん?」

「こっちも彼氏代わりに古々乃木先輩も来てくれると嬉しいんスけど?」

「誰が彼氏だ」

「代わりッスよ、代わり」


 しゃあねぇなぁと呟いて、承諾する供助。

 払い屋である三人を残して、他のメンバーは来た道を戻っていく。


「ごめんね、悠一君。ここまで来たのに引き返す事になっちゃって……」

「本当だよ。せっかく何か手掛かりが……」

「悠一。皆を危険な目に合わせる訳にはいかないでしょ? 祥太郎君、私達の事は気にしないで」

「結花さん……」


 祥太郎へ不機嫌さを隠さず返事する悠一に、たしなめるように結花が間に入る。

 その様子を見て、太一もフォローも踏まえて悠一へと話しかけた。


「まーまー機嫌直せよ、悠一。夜より明るい時間帯に来た方がよく見えるし、安全だろ?」

「そんな悠長にしてられる程、時間は残って……」

「時間?」

「……いや、何でもない。こっちの話だ」


 失言した、と。悠一は口元を手で隠して太一から目を逸らす。

 太一も表情を見て触れて欲しくない事だと思い、深くは触れないでおいた。


「ま、供助達に任せとけば大丈夫だって。何かあったら絶対教えてくれっからさ」

「……太一、お前って随分とあの三人を買ってるよな。なにか理由があるのか?」

「えっ!? あーいや、そうか? 別にそんな事ないと思うけど」

「お前だけじゃない。祥太郎も、和歌も。あっちは三人だけ残ったっていうのに、心配する素振りすら見せないだろ」

「それはーそのー……うん、まぁ、な。色々あって助けられてさ。信頼してんだ」

「そ、か」


 鼻の頭を軽く掻きながら、少し照れくさそうに。太一が答える。

 詳しく話を聞きたいという気持ちはある。けど、さっき太一があまり悠一を詮索しなかったように、悠一もまた詮索しなかった。

 苦笑しながら話す太一の顔からは、はっきり言わずとも確かな絆を感じられた。

 少し、悠一の機嫌が戻ってきた所で。後ろを付いてきていた祥太郎と和歌が足を止めて口を開いた。


「なんか、変じゃない?」

「そうよね……だって、そろそろ広い道路に出ていい筈なのに、道路どころか近くにあった家も見えてこない」


 漂う不安と、肥大してくる恐怖。動揺した表情の二人。

 言われて太一も辺りを見回すと、確かにおかしい。どこか変。

 湧き上がってくる焦燥感に、背中からぞわりと寒気が走る。


「おい、来た時こんな景色じゃなかったよな? 一本道だった筈だよな……!?」


 周りはどんどんと木々で鬱蒼とした景色に変わっていく。

 気付けば砂利道から、獣道へ。一本道を歩いていたのに変化する周囲。通常は異常へと飲み込まれていく。


「結花、これ」

「うん、巡らされてる……!」


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