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第八十七話 結界 -メグラレ- 壱

「悠一君、この坂の上?」

「あぁ」


 祥太郎と悠一。二人の目の先には少し勾配が急な坂が長く続いている。

 消防団の二人から得た話にあった、工事現場がこの先にある。


「和歌ちゃん、別にこんな所まで付き合わなくてもいいよ?」

「ううん、放っておけないよ。お姉さんの子供も心配だし。私も行く」

「……うん、ありがとう」


 周りにはまだ民家がチラホラあるが、坂の向こうは闇が続いて真っ暗。

 坂を見上げて不安な表情をしていた和歌に気付いて、結花が優しく声を掛ける

 しかし、和歌はすぐに笑顔を作って。迷いもせずに結花へと返事した。


「行くぞ」


 悠一が先陣を切って坂を歩き出す。太一、祥太郎、和歌、結花が、順に付いていく。

 少し離れ後方、払い屋組の三人は辺りに気を張りながら、話を聞かれないよう小声で話をする。


「……南、どう思う?」

「今の所は特に何も無し。妖気も相変わらずうっすいカルピス状態ッス」

「そっちじゃねぇ。あの二人だ」

「あの二人……悠一と結花ッスか?」


 先を歩く二人の後姿へと向ける供助の目は、懐疑心を含めたものであった。


「引っ掛かりまス?」

「なんか、どうもな」

「まさか、神隠しや不明瞭な妖気の原因はあの二人……とか?」

「にしては回りくどいだろ」

「ッスねぇ」


 何かおかしい、怪しい。腑に落ちない。引っ掛かる。

 そんな様子で、供助の勘は何かあると言っている。


「供助の言う通りだの。確かにどこか妙ではある」


 顎を軽くさすりながら、供助に賛同する猫又。

 神社で酒盛りをしていた時から、猫又もまた二人に何かしらを感じていたのだった。


「そもそも、だがの。子供が消えて神隠しだと騒ぐのは解る。しかし、悠一と結花。鳥居の話を聞いた途端、疑いもせず真っ先に行動に起こした」

「あぁ、それだ。おかしいのは。神隠しったって誰も本気で信じている訳じゃねぇ」

「……確かにおかしいッスね。思い返せばあの二人、まるで神隠しの原因が“人外によるもの”っていう前提で動いてる節があるッス」


 神社の書物に記されていたケガレガミや子守歌の内容。それに封印されたという鳥居の事も。

 普通の人から見ればオカルトでしかない話を、あの二人は常時真剣に話をしていた。


「初めは人による誘拐だ、妖による神隠しだと言ったちゃいたが……」

「どっちかが原因じゃなく、両方……という事も考えられる訳だの」


 と、その時。


「ちッ!」

「む!?」

「っとぉ!?」


 三人同時に、その異変をその身で感じ取った。

 煽られる不安感。体に纏わり付く違和感。肌がひり付く危機感。

 端的にいえば、結界への侵入したのだ。それも明確な敵意のある領域に、だ。


「いきなりッスね。あの二人は?」

「不審な動きはない……が、この空気の変化に和歌達も何か感じたようだの」


 言いえぬ疑念を拭えないまま、転ずる事態。

 先を歩いていた悠一達も何かを感じたか、足を止めていた。


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