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      贄歌 -コロリヨ- 伍

「珍しい鳥居って言われてもなぁ」

「なぁ。そう言えばあそこ、団地近くの山。切り崩して住宅地にするって話あったろ。開拓工事してたら、なんか出てきたって話がなかったっけ?」

「あー、言われてみたらそうだな……すげぇ解りにくい所に石の作り物があったとか。なんだっけ、しょうし? だっけ?」

「それでか今は工事が中断してるとか」


 しかし、男二人から出てきたのはドンピシャに近いものだった。

 供助と南は目が合い、猫又は眉を微動させ、払い屋組は何かを感じ取る。

 男が言った『しょうし』とは、おそらく小さい社である『小祠』の事だろう。

 工事の途中、急に出てきた小祠、今は工事中断。的中ではないにしろ、何かしらの手掛かりはありそうだ。


「それ、本当ですか!?」


 消防団の後ろから発せられた、焦燥と期待が入り混じった声。

 書物を返しに行って、戻ってきた悠一と結花の二人がそこにいた。


「この二人も君達と一緒の子?」

「そうです。それより今の話は……!」

「又聞きした話だけどな。理由は聞いてなかったけど、工事が止まってるって話は一週間前からあったし。本当なんじゃないか?」

「ありがとうございます!」


 悠一と結花はその話を聞き、ようやく手に入るかもしれない手掛かりに顔を見合わせる。

 その二人を見て、なんかよく分からないがまぁいいかと、小さく首を傾げる男二人。


「とりあえず、あまり遅くならないようにな。夜十時以降は出歩かない事をお勧めするよ」

「食べた終えた容器や缶もちゃんと片付けて綺麗にな」


 茶髪のロン毛に、唇にピアスした金色の短髪。見た目に反して去り際のセリフは真っ当な事。

 二人は周囲の警戒と未成年の声掛けを続ける為に、屋台の方へと足を向かわせていった。


「よし、行くぞ結花」

「うん」


 悠一と結花はテーブルに散らかっていた空の容器をまとめ、片付けていく。


「おいおい、今から行くのか? もう暗いし、工事現場だから無断で入れないだろ?」

「それでも行く。一分一秒でも惜しい」

「……ったく、しょうがねぇなぁ」

「太一?」

「俺も行く」


 太一もパイプ椅子から尻を上げ、自分の近くにあった缶を片付ける。

 さっき猫又に注意された通り、妖怪だなんだと不用意に騒いでしまった。悠一と結花の不安を煽ってしまった罪悪感もあり、放ってはおけない気持ちが強かった。

 もっとも、罪悪感抜きでも太一は一緒に行くと言っていただろう。そういう人間だ。

 それに勿論――――。


「なら僕も行くよ。心配だもん」

「私も。ここまで話を聞いておいて他人事にできないわ」


 祥太郎と和歌も同様だった。


「ま、そうなるだろうの」

「ま、そうなるわな」

「なんでそうなるかねぇ……」


 猫又と南もこうなる事は予想していた。同様の言葉を言いながら、ビールをちびり。

 同じく予想していた供助は、腕を組んだまま頭をがっくりを落とすのであった。

 そこから片付けるのは早い。猫又と南は飲んでいたビールを一気に空にし、残り少なかった食べ物も全員で口にかっ込んだ。


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