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      童謡 -コモリウタ- 弐

「で、なんでお前ェは勝ち誇った顔をしてんだ?」


 供助は面倒臭そうに、いや、明らかに触れるのは面倒だと。

 しかし、ずっと得意げな顔をされているのもウザいので、しょうがなく猫又に聞いてやった。しょうがなく。


「んっふっふ、私はちょいと手掛かりを掴んでの」

「本当ですか!?」


 わざと他の人にも聞こえるように声を出す猫又に、結花は落としていた面を起こす。


「うむ。さっきの騒ぎの人だかりが捌けて行く際、気になる事を耳に挟んだ」

「その気になる事っていうのは……?」

「それがの、なんでも歌が聞こえていたらしいの」

「歌、ですか?」


 ちゃぷん、と。まだ少し残っていたのを確かめ、猫又はぬるくなった缶ビールを飲み干してから答える。


「中年の主婦と思われる人達が言っておったのだ。何やら歌……童謡が聞こえなかったかと警官に聞かれた、と」

「童謡……どんなのなのか言ってましたか?」

「それがの、その歌は子守歌だったと言っておった」


 空になった缶をテーブルに置き、その淵を指先でなぞりつつ、猫又は怪訝の表情で話していく。

 子供の神隠しと子守歌。一体なんの関係があるのか。『子』という共通点はあるが、それだけだ。


「歌、童謡、子守歌。どこかで……」


 猫又の話を聞いて、反応を示したのは悠一だった。

 腕を組みながら手で口元を隠し、考え込むこと数十秒。


「そうだ! 確か神社の書庫にそんな事を記してあった書物があった……!」


 脳内検索を掛けた結果、該当するものが一件見つかった。

 神社の書庫に仕舞われた一冊。だいぶ前だが、悠一は似たような内容が書いてあるのを読んだ記憶があった。


「けど、そういうのって普通、保管されてて簡単に閲覧できないよね? よく読む事ができたね」

「あ、ああ……前に学校の課外授業でこの神社に来た時にな。特別に見る事が出来たんだ」

「よくあるよね、町の歴史を学ぶ、みたいなの」

「そうなんだよ。その時は全く興味なかったのが、今になって役に立つなんてな」


 悠一は祥太郎に苦笑いで返して、パイプ椅子から立ち上がる。


「ちょっと神社に行って書物を貸してもらってくる!」


 ようやく見付ける事が出来た手掛かり。悠一は少しでも解決に近付けるならと、駆け足で本堂の方へと走っていった。

 その後姿を見送りながら、供助はふと浮かんだ疑問を一つ口にした。


「さっき祥太郎が言ってたけど、神社で保管されてる書物って簡単に貸してくれるモンなのか?」

「多分、無理だと思う……」



 地域の伝承などを記した物であれば、相応の場所で大切に保管しているはずである。それを高校生から貸して欲しいと言われて、二つ返事で貸してくれる訳がない。

 それも今は祭り中。神社の関係者は色々と忙しくしている中では、可能性はまず低いだろう。

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