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第八十五話 童謡 -コモリウタ- 壱

 騒動が起きてから三十分後。

 神社の境内には多少の不穏感は残りつつも、お祭りの空気が戻り始めていた。


「で、結果は?」


 戻ってきた野次馬達に言うは供助。

 が、結花の面持ちからして返答は予想できよう。


「……何も分からず、だ」


 代わりに答えたのは悠一だった。


「迷子も神社で見付からず、母親はパトカーで警察署に連れていかれた。まだ探してない所もあるだろうから、何人か警察は残ってるけど」

「ああ、あちこちにまだ居るのはそのせいか。あんな事が起きても祭りは止めねぇんだな」

「この町じゃ年に一度の大きな催し物だから。そう簡単に中止、ってのは出来ないんだ」

「子供が何人も行方不明になってるこの状況が、まだ簡単って範囲なのか」

「……」


 供助の言葉に、悠一は何も言えずバツが悪そうに下唇を噛みしめる。

 すでにここ一週間で四人も行方不明になってる。もう十分に大事だろうに、この町は人が集まる祭りを引き続き開催するというのだ。

 町としては大事な行事なのは理解できるが、それでも子供が何人も居なくなっている状況で行うのは避けるべきなのではと思える。


「でも、祭り中は警察も増員して見回るって言ってたから……」

「子供が神隠しで消えて、手掛かりも掴めてねぇ警察が増えてもな。そこまでしてやる祭りなのかねぇ」

「それは……すまない」

「なんでお前が謝んだよ」


 申し訳ないと謝る悠一に、供助はテーブルに肘を付きて大きなため息を一つ。

 確かに悠一が謝る必要は無い。だが、それでも無意識に零れ出してしまった謝罪。

 無関係の供助達に事件解決の為に巻き込んでしまった者として。そして、町の一員として。


「で、供助。そういうそっちはどうだったのかの?」

「あ? 何がだよ」

「お前は面倒くさがり屋ではあるが、薄情ではない。のぅ、南?」


 おもむろに、意味深に。猫又はわざとらしく南へと振る。

 悠一と結花には聞こえぬよう、こっそりと。


「はっ、バレてら。古々乃木先輩、正直に言っていいんじゃないスか?」

「……ちっ」


 供助は観念して、頭を掻きながら舌打ちした。


「一応、周囲を探ってはいたが、怪しいヤツはいなかった。こっちも収穫無しだ」

「あたしも霊感を巡らせて探知してたけど、これと言って特に無かった。ま、神社内に居るからそもそも悪霊の類は入れねぇだろうけどな」


 供助が席も立たずにこの場に残ったのは、何も面倒臭かったから、という理由だけではない。

 本当に子供がこの神社内で消えたのなら、犯人もこの神社にいる可能性が高い。犯人は現場に戻る、という訳ではないが、離れて広く視界が開けた所からこそ見えるものもある。

 それに気付いていた南も、同じく残って二人で周囲の警戒をしていたのだ。

 が、結局は悠一達と同じく何も手掛かりになりそうな事は無かった。


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