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      相談 ‐カミカクシ‐ 参

「もしやと思うが、先ほど結花が言っていた人を探しているというのは……」

「……結花の姉の娘が、三日前にその神隠しにあったんです」


 結花は視線を落とし、暗い顔にさらに影が作られる。

 やはりか、と。猫又は目を僅かに細めた。


「しかし、連続で行方不明事件が続くのであれば、神隠しなどではなく同一人物による犯行とも考えられるが」

「俺も神隠しなんて本気で信じている訳じゃない……でも、消えた子供達の手掛かりが一切無いんだ。結花の姉さんの子供も、目を離したほんの数十秒で居なくなって……」

「ふ、む」


 猫又はフランクフルトの棒っきれを指先で転がし、悠一の話を怪訝な顔で聞いていく。

 話を聞いただけではよくあるケース……というのも変だが、誘拐事件として見るのが普通だろう。

 しかし、身内となれば落ち着いてはいられない。結花も何か手がかりでもと歩き回っていたのだ。

 結花は顔を上げ、ほんの少し震えた声で喋りだす。


「だから、除霊って言葉が聞こえた時……思わず声を掛けてしまったんです。あなた達が霊能力者だったら、今回の件が本当に神隠しの類だったら何か解るんじゃないかと思って」


 藁にも縋る思いだったのだろう。何でもいいから、少しでもいいから。

 姪を見つける為の情報を少しでも掴みたい。見付けたい。その一心なのだろう。


「どう思います? 古々乃木先輩」

「話を聞くだけじゃあ誘拐じゃねぇか?」

「そッスよねぇ……ちなみに聞いた話云々を抜きにして、古々乃木の勘はどうスか?」

「……さぁな」


 南の問に、供助は曖昧な答え。ノーともイエスとも言わない、どっちでもない言葉。

 嘘を言ってるでも、隠してるでもない。本当にどうか解らない。そんな感じだった。 


「そうか。しかし、私達は暇な旅行者だの。すまんが、神隠しどうこうには力になれそうにない」

「いえ、こちらこそすみませんでした。初対面の方々に気分が暗くなる話をしてしまって……」

「気にするでない。私の方こそ心中を察する。早く子供が見つかることを祈っておる」

「そうだ、皆さんはいつまでここに居られますか? 今、近くの神社でお祭りをやってるんです。良かったら一緒にどうですか?」

「祭りとな?」

「はい。お詫びって訳じゃないんですけど、お祭りなら私達が暗くしてしまった気持ちも吹っ飛ぶと思って」

「祭りといえば屋台……かき氷、りんご飴、チョコバナナ、焼きそばにタコ焼き、フランクフルト。美味しい物がいっぱいだのぅ」


 猫又は目を輝かせ、色々な食べ物を思い浮かべて涎をすする。

 というかフランクフルトはさっき食べたばかりだろう。


「祭りかぁ、面白そうだね。僕は行ってみたいかも」

「俺も祥太郎と同じく。祭りって聞いたらやっぱ行きたくなるよなぁ」


 祭りと聞いて祥太郎と太一も興味を示す。ここに居る者達は基本、賑やかなのは大好物。

 お祭りと聞けば心が躍る。


「祭りかぁ、久しく行ってねぇな。行くならあたしも付き合うぜ」

「私は夏祭り以来かも。祭りってなんかテンション上がりますよね」


 勿論、それは南と和歌も乗り気な訳で。

 ここで供助一人が興味無いと一蹴すれば、確実に空気の読めていない人間である。

 しかしまぁ、供助も祭り自体は嫌いじゃない。屋台の料金が高めで、財布が軽くなってしまうのが痛いが。


「ま、いいんじゃねぇか。せっかく遠出したんだ、ご当地のイベントってのを見てみるのも悪かねぇだろ」

「やたっ! 供助からのお許しが出たの! 今夜は祭りでパーリナイ!」


 フランクフルトの串を握り閉めて小さくガッツポーズする猫又。

 古々乃木家の財布は供助が握っている以上、供助の許可が無ければ祭りに行っても飲み食いは出来ないのだ。

 飲み食いだけが祭りの楽しみではないが、猫又にとっては半分はそれで占めている。


「そういや、俺も祭りは久しぶり……」


 ――――チリン。


「……ッ!?」


 突然耳に入った、鈴の音。聞き慣れた、あの音。

 供助は僅かに目を見開き、ゆっくりと辺りを見渡す。

 見知らぬ土地。初めての街。しかし、鈴の音は変わらず聞こえてくる。


「古々乃木先輩? どうかしたッスか?」

「……いや、なんでもねぇよ」


 不思議そうに聞いてくる南に、供助は。

 いつも通りに平然と答えるも、その表情は微かに眉を(しか)めていた。


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