探者 嵌 ‐サガシモノ カン‐ 弐
理解もして、納得もした。だが、了解は出せなかった。
理由は簡単簡潔。せっかくの一人暮らしなのに、住人が増えるなんてのは真っ平御免だった。しかも、見ず知らずの人なら尚更。
供助は面倒臭がりな上に、お世辞でも人付き合いが上手いとは言えない。機嫌が悪ければ態度に出るし、面倒な事に対しては行動しない。
一緒に住む以上、相手に気を掛けなきゃならない。気も使わなきゃいけない。イコール、面倒臭い。
気の知った間でも無い人間と共同生活する位なら、まだ妖怪の方が気を使わなくて楽であると、供助は考える。
なにより自分以外に人が住んだら、家で友人と気軽に遊べなくなる。
『供助君、今なんて言った?』
「はい? 住人を増やす気は……」
『その前』
「貸家じゃねぇ、ですか?」
『さらに前』
「無駄に広くて部屋が余ってる」
『もっと前』
「もう一人なんて勘弁してくれ」
『もうちょい前』
「えーと、猫又だけならともかく」
『はいそこ、ストップ』
何か変な事でも言ったのかと思いながら、横田に言われるままに答えていく。
『その言い方だと、猫又ちゃんだけならいいみたいだけど?』
「いや、まぁ……猫又の護衛の為とは言え知らねぇ人間と一緒に住む位なら、まだ妖怪の方が気が楽だし」
『妖怪よりも、そんなに他の人と住むのは嫌?』
「誰かと住むくらいなら、まぁ、そうですね」
『なーんだ、じゃあ問題無いじゃないの』
「……へ?」
『だって実質、同居人が増えるのは猫又ちゃんだけだもの』
「は? え……えっ?」
供助は思考が追いつかず、軽くフリーズする。
いまいちどころか大分話が解らなく、さらに頭がこんがらがる。
『いやー、良かった良かった。供助君の了解も得れて』
「ちょ、ちょっと待って下さい。意味がさっぱり解らないんですが……」
「馬鹿だのう……私がお前の家で世話になるという話だの」
「んな事ぁ解ってんだよ!」
「あと、出来れば私のご飯も人間食がいいの。最近は刺身とかが恋しいくてのぅ」
「頼む、少し黙っててくれ。今はお前ぇの飯の話はどうでもいい」
「うぬぅ……」
供助はこんがらがる頭の中を整理するが、頭痛までしてきた。
横から入ってきた猫又を軽くあしらいうと、猫又は残念そうに人差し指を咥える。
「護衛を一人付けるって言ってましたよね? それなのに住むのは猫又だけって……」
『供助くん、君』
「は?」
『猫又ちゃんを護衛するの、君』
一秒、二秒、三秒、四秒、五秒後。
「……はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああっ!?」