第八十三話 相談 ‐カミカクシ‐ 壱
「それで何がどうなって、こうなっておるのかの?」
一人コンビニの駐車場に置いてきぼりを喰らっていた猫又も合流し、フランクフルトを頬張りながら一言。
太一達と合流したら見知らぬ人間が二人増えていて、猫又はイマイチよく状況を理解できていなかった。
「それを今から聞くとこだ」
しかし、それは供助も同じである。
とりあえず全員が揃ってから話を聞いた方がいいと、こうして猫又を待っていたのだ。
「んで、あんた等はどちら様で?」
猫又のフランクフルトと一緒に南が買っていた炭酸飲料のペットボトルを開けて、供助は正面に立つ二人に声を掛けた。
グランチェック柄のワンピースの女性と、茶色のミドルゲージニットを着た男性。歳は供助と同じくらい。
「あの、初めまして。私は結花って言います。こっちの隣は……」
「悠一だ。よろしく」
肩までの髪を後ろで結い、赤い髪留めをしている女性。そして、隣のサイドとバックを刈り上げた男性。
二人が並んで自己紹介をする。結花は落ち着いて物腰が柔らかく、悠一は爽やかで優しそうな雰囲気がある。
「俺は供助だ。隣でタバコ吸ってるヤンキーが……」
「南ってんだ。てか、ヤンキーってなんスか!? 元ッスよ、元!」
「で、そっちのアホ面でフランクフルトを食ってんのが」
「猫又と言う。バカ面の奴にアホ面とは言われたくないの」
供助が続けて二人を紹介し、各々が名乗っていく。
眼付きが悪いスカジャンの女と、黒い和服の女。インパクトでは確実に供助達の方が勝っている。
「ネコマタ……? 変わった名前ですね?」
「あだ名みたいなもんだの。気にせんでくれ」
結花が少し怪訝な顔を見せるも、猫又は流すように受け答える。
「そんで太一、何がどうだってこうなってんだ?」
「あーっと……ちょっと俺等、というか供助達に聞きたい事があるらしくて」
供助に聞かれた太一は少したじろぎ、歯切れの悪い返しをしながら悠一と結花に視線を送った。
その反応で供助の勘が働く。面倒臭そうな予感がすると。
「実は私達、人を探してるんです」
「人だぁ?」
事情を話し始めた結花の一言目を聞いて、供助は思う。
ああ、この時点でもう面倒臭い。
「今日も悠一と一緒に探して歩いていたんです。そしたら、浜辺で皆さんが除霊がどうこうって話しているのが聞こえてしまって……すみません、盗み聞きするつもりは無かったんですけど」
「除霊、って……」
供助は思わず笑っていない目で失笑が出てしまった。そして、太一達へと物言いたげな視線を向けると。
太一は気まずそうに目を逸らし、祥太郎はすまなそうに苦笑いを浮かべ、和歌は申し訳ないと肩を小さくしていた。
「それで、もしかしたらと思って……」
「もしかしたらって何がだ?」
「その、霊能力者とか霊媒師の人なんじゃないかって」
「……はぁ」
再度太一達を一瞥すると、太一は背中を向け、祥太郎は手を合わせて小さく謝り、和歌は頭を下げて。
三者三様の反応を見て、供助はドでかい溜め息を一つ。




