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      再度 ‐デジャヴ‐ 弐





    ◇   ◇   ◇




「ったく、浜辺を歩いてるったって浜辺のどこだよ。地味に広いじゃねぇか」


 防波堤の階段には、スマホを片手に独りごちる供助の姿。

 依頼を終えて戻ってきたはいいが、合流場所の浜辺に来ても太一達が何処にも見当たらなかった。


「先に合流しとこうと思ったのによ……面倒臭ぇな、これなら南達と一緒にコンビニに寄っときゃよかった」


 南は近くのコンビニに車を置きに行き、ついでに猫又は小腹が空いたと食料を求めて。

 供助は先に太一達と合流して、南に連絡して迎えに来てもらう予定だった……のだが。


「砂と海しか無ぇ」


 人っ子一人いない。もちろん人影も無い。

 これで探して見付けろと言うならば、もう浜辺を掘るしかないだろう。


「どっかに移動したなら連絡入れとけっての」


 スマホの通話履歴から太一の番号を表示させて、あとワンタップで電話出来るという所で。


「ちょっ、離してください!」


 背中の防波堤を挟んで向こう側から、ちょっと穏やかではない声が聞こえてきた。


「……こういうの何て言ったっけ? デンジャー?」


 聞き慣れた声と、聞き覚えのあるセリフと、身に覚えのある展開。

 供助は呆れながら、半目で小さく口端を引き釣らせる。あとデンジャーではなくデジャヴである。まぁある意味デンジャーで間違っていないでもないが。

 下りきった階段をUターンしてすぐまた上り、防波堤の上から見下ろすと。そこには予想通りの光景が目に入った。

 和歌が野郎二人に絡まれているという、予想通りで前にも見た覚えがある光景が。


「この辺、遊ぶとこあんま無いっしょ? 車持ってるから俺等が楽しいとこ教えてあげるからさー」

「そーそー。ドライブがてら美味しいもの食べたり楽しい事しようよ」


 サングラスを掛けた茶髪のロン毛と、唇にピアスをした短髪の金髪。いかにもチャラそうな格好の男二人に、和歌は対処に困っていた。

 逃げようにも防波堤の壁でロン毛に壁ドンされていて、逃げ出そうにも逃げ出せない状況に陥っていた。


「はぁ……」


 もはやパターン化してきたこの展開に、供助は溜め息を漏らしつつ頭を掻く。

 どうしてこう面倒事に巻き込まれるのか。面倒臭がり屋としては身内が面倒事に巻き込まれるのは勘弁して欲しい。

 しかし、このまま無視して見て見ぬフリする訳にも行かず。供助は背中を丸めて、面倒臭さを全身で表しながら階段を下る。


「すんませーん」

「あ、供助君……!」


 供助が近付いて声を掛けると、真っ先に見向いた和歌の声には安堵と哀願が混ざっていた。

 初めての土地なのもあって恐怖が増したか、和歌の眼鏡の奥は涙目。完全に孤立した状態で心細さも強かったろう。


「とりあえずその手、どけてもらえます? 怖がってるんで」


 壁ドンしていたロン毛の腕を供助が掴み、逃げ道を閉ざされていた和歌の圧迫感を消してやる。


「なんだお前、この女の彼氏?」

「いんや、ただの友達」

「あぁそう。今さ、大事な話をしてたんだよね」

「えーっと、彼氏じゃなかったら駄目なんすか?」

「いや、丁度いいや。君もちょっと話そうか」

「あーいいです、遠慮しときます。すんませんしたー」


 困っていた所に助けが現れたと思いきや。

 供助はあっさりと男から手を離して謝ったのであった。



「え、ちょ、供助君……!?」

「あーららら、お友達は人見知りかな?」


 簡単に引き下がった供助を小馬鹿にするように鼻で笑い、二人組の男は強引に和歌を連れて行こうとする。



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