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第八十二話 再度 ‐デジャヴ‐ 壱

 青い海。白い砂浜。先には水平線が見えて、海猫が空で鳴いている。

 しかし、小麦色の肌をした若い女性はどこにも見当たらない。

 今は十月で季節は秋。海水浴シーズンは既に終わっている。水着女子なんて当然、人っ子ひとり居ない。居る訳ない。

 だが、海水浴は出来ずとも人が居なく貸切状態の浜辺であれば、波音を耳にしながら歩くだけでも楽しいものだ。

 太一と祥太郎、そして、和歌の三人は。遅い朝食兼昼食を取ってからペンション近くの浜辺へと遊びに出ていた。


「クラゲもあんまいなさそうだし、泳ごうと思えば泳げそうだなー」

「もう十月だし、水温が低くて寒いと思うよ?」 


 夏に海へ行く機会が無かったのもあって、太一と祥太郎は久しぶりの海に軽くテンションが上がっていた。

 しかし、その二人の後ろで静かにしている和歌の姿があった。


「残念だったな、委員長。供助と一緒に歩きたかっただろ?」

「えっ!? べ、別に私はそんなんじゃ……」

「急に仕事が入って三人は朝から出掛けちまったからなぁ」

「仕方ないよ、仕事なんだから」


 今日の朝九時頃に横田から供助に電話があり、急きょ依頼が入ったのだ。

 バッチリ睡眠を取った供助は元気になったが、深夜遅くまで酒盛りをしていた二人は言うまでもなくグロッキー状態。

 朝風呂に入っていくらかは回復したが、遅れて起きた和歌が朝食を準備する間も無く三人は出て行ってしまった。

 気持ちよく寝ていた所を叩き起されて、さらには急な仕事。猫又は不機嫌にずっと文句を垂れていた。


「でもま、依頼は早く終わったってさっき電話あったし、もうすぐ戻って来るだろ」

「せっかくの旅行なのに、ゆっくり出来なくて大変だね……払い屋の仕事って」

「なーんか今年は特に忙しいって供助がボヤいてたなぁ。どこかでこうなる事は予想してたんじゃないか?」


 急な仕事の依頼だったというのに、供助は別段嫌がる様子も不貞腐れる様子も見せていなかった。

 南も同じで、寝不足と飲み過ぎでのグロッキーであったものの、依頼に対しての文句は一言も漏らしていない。

 文句タラタラだったのは猫又だけだった。


「人を相手にするのと違って、幽霊や妖怪が相手だからね……時間が不定期ってのはよくあるのかも」

「昼夜関係無く依頼が来るのって……なかなか気が休まらないよね」

「今日みたいに当日にいきなり仕事が入るのは珍しいみたいだけど」

「時間や日にちが決まっていない上に、怪我と隣り合わせの仕事、か。供助君、どうしてそんな危険な仕事を続けるんだろ……?」


 少し肌寒い海風を頬に受けて、和歌は疑問を口から零した。

 危険で、不定期で、大変な仕事。払い屋という職業。それを続ける理由はなんなのか。

 一人暮らしでお金が欲しかったから。それはあると思う。けど、それだけでは無いとも思う。


「テレビやネットで見たイメージと違って、除霊の仕事って意外と多いんだな」


 両手を後頭部で組みながら海を眺めて、何気なく言う太一。

 この浜辺に居るのは自分達だけ。そう思い込んでいた油断と、近付く足音は波音に紛れて。

 接近と、その会話を聞かれていた事に気付けず。


「今、除霊って……言いましたよね?」


 和歌、太一、祥太郎。三人が声に反応して振り返った時には、すでに遅った。


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