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第七十九話 飲会 ‐ジョシパ‐ 壱

「っはー! いい湯だったぜ!」

「本当ですね。まさかここのお風呂が温泉だとは思わなかったです」


 遅めの夕飯を食べ終わって少しの食休みを取った後、南、和歌、猫又の女性陣が風呂に入っていた。

 レディファーストという訳では無いが、野郎共が最初に入るのも気が引けるという事で太一達が先を譲ったのだ。

 同じ屋根の下で風呂上がりの女性。それも複数人。湯上りで火照った体に、赤みを帯びた頬と唇。濡れて艶やかな髪。

 スウェットの南に、薄ピンク色のルームウェアの和歌、いつもと同じ黒色和服の猫又。普段よりもエロ……魅力的に見える三人に、少しばかり胸が高鳴るのは男子たる者の宿命である。


「さすが温泉! 見てみろ供助、私の肌を! こんなに瑞々しくツルツルに! まるでゆで玉子……いや、もはやこれは半熟玉子だの!」

「半熟玉子じゃツルツルじゃなくてドロドロだろうが」


 風呂が空くのを待っている間、ソファに寝転がって眠気と戦っていた供助が興味無さ気に返す。

 太一と祥太郎はその横でお菓子を食べながらテレビを見ていて、風呂上りの女性陣に少しばかり心音を高めていた。


「でも、猫又さんって肌が本当に綺麗ですよねぇ、羨ましいなぁ。なにか秘訣とかあるんですか?」

「ふふ……和歌、聞きたいか? 聞きたいであろう? それはな……」

「秘訣なんて無ぇよ。飯食ってゴロゴロしてるだけだ。ノーストレスで生きてる放牧豚みてぇなもんだろ」

「誰が豚だのっ!? 私は猫だし! 豚じゃなくて猫だし!」


 依頼がない日は好きな事をして一日を過ごし、ストレスとは縁遠い生活を送っている猫又。

 悠々、伸び伸び。猫らしくだらりと。猫又はノーストレス生活を満喫していた。

 その分、供助のストレスがマッハなのだが。将来の毛根が心配である。


「んじゃ俺等も風呂に行くか。そろそろガチで眠気が限界だ。さっぱりして寝てぇ」

「何言ってんだよ、供助。夜はまだこれからだぞ」

「そうそう、寝たらもったいないよ」


 疲れと眠気と満腹感で重く感じる体を起こして、供助は頭を掻きながらソファから立ち上がる。

 供助と違って太一と祥太郎はまだまだ元気。親の居ない旅行で開放感もあってテンションが高い。

 しかし、供助は昨日からほぼ完徹状態。長旅の疲れもあって限界間近なのであった。


「そんじゃあたし達はあっちの部屋で女子パすっから覗くなよ、野郎共。あ、古々乃木先輩はゆっくり疲れを癒してくださいッス!」

「南ー、やっぱ風呂上りにはビールかの? それともハイボールいっちゃう?」

「夕飯の時に飲んでたのに、まだ飲むんですか?」


 夕飯前から結構飲んでいたというのに、まだ飲む気の二人に少し呆れ顔の和歌。

 しかし、そんなのは関係無いと猫又はキッチンの冷蔵庫へと冷やしてある酒を取りに行く。二本の尻尾をご機嫌に揺らして。


「ほら和歌、あたし達は部屋に行くぞ」

「南さんもいつの間に菓子袋を……」

「そりゃ酒飲むならツマミは欲しいし、お前も菓子食うだろ? あ、猫又サン、和歌のジュースも頼むー」

「どっこい承知の助だのー」


 両腕で大量の飲み物を抱え、猫又は尻で冷蔵庫の扉を閉めて返事する。

 先に南と和歌が入った部屋は洋室で、広さは十畳ほど。大きめのベッドが二つ並び、その間には小さめのテーブルが置かれている。

 ここのペンションは二階建てで一人一部屋でも充分に割り振り出来るが、それじゃつまらないと南が女性陣は一つの部屋にまとめた。


「ほー、この部屋もなかなかの広さだのぅ」


 大量の酒とジュースを持ってきた猫又も部屋に入り、部屋を見回して感想を一つ。

 外装だけじゃなく内装も綺麗で、広さもあって部屋も多い。霊が住み憑いて無ければ人気の物件になっていたであろう。


「猫又さん、この部屋はベッド二つしかないのに同じ部屋で大丈夫なんですか? なんなら私は別室で寝ますけど」

「構わん構わん。私は猫の姿に戻れば、座布団やクッション一つで何処でもベッドになるからの」


 テーブルに飲み物を置いて、取っ手の穴に尻尾を器用に通して持ってきたコップを手に取る猫又。


「そんじゃ、とりあえずカンパーイってな!」

「カンパイだのー!」

「か、カンパーイ」


 猫又と和歌が並んでベッドに座り、対面のベッドに南。

 間に挟まれたテーブルには開けた菓子を置いて、三人は各々が持った飲み物を互いに小突き合う。

 そして、南と猫又は缶ビールを一気に喉へと流し込んだ。


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